【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第3章】SSXの補完、および、後日譚。
【第2節】事件当時の各人の動向。(後編)
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宗教はいささか現世否定的な代物で、基本的には『どんなに努力して戦争に勝っても、やはり、天変地異は起きる。だから、この世には、神などいない。神はあの世にこそいるのだ』という考え方でした。
やがて、そこからさらに発展して、『人間がいくら祈っても、神はこの世の人間を助けたりはしない。神はただ、あの世で死者の魂に「評価」を下すだけだ。努力は、必ずしもこの世で報われるとは限らないが、あの世では魂に対する「重要な評価基準」のひとつになる』といった、極めて現実的な(?)考え方が主流となりました。
それだけに、聖王教会が説く「死後の魂の救済」という発想それ自体は、かえって受け入れやすかったようです。
今や、クレモナでは中央政府の無策ぶりも手伝って、聖王教会の支持勢力は「相当に」強いものとなっていました。
はやて「なんや、そんなに無策なんか?」
シャマル「ええ。特に、福祉関連で無策ですね。その昔は、移民政策の迷走ぶりも随分とヒドいものだったと聞いています」
具体的に言うと、三百年あまり前の〈大脱出〉の時代には、クレモナに来たベルカ系移民は総計で600万人ほどいたのですが、彼等はみな、当時はまだ開拓途上だった「第四大陸」に住まわされました。
しかし、そのわずか十数年後には、ほぼ同数のクレモナ人が、もっぱら「口減らし」のために、他の3大陸から〈管15デヴォルザム〉の第三大陸へと送り込まれたのです。
『こんなにも早く「口減らし」が必要になるぐらいなら、何故それほど多くのベルカ系移民を受け入れたのか?』
それは、人々が中央政府に不満を募らせるのも無理は無い、という状況でした。
【なお、クレモナ語では、この「デヴォルザム第三大陸」のことを、独自の固有名称で「カロエスマール」と呼びます。また、当時、クレモナで「王命」に従って移民事業を主導した八つの伯爵家は、後に、みずからも「カロエスマール」に土着しました。現地では、彼等は今もなお「八伯家」と呼ばれ続けています。】
また、クレモナでは、増長するベルカ貴族たちの過大な要求を封じ込めるために「身分制」そのものが廃止された後、旧暦の末、統合戦争の時代には、さらに数百万人を「友好国デヴォルザム」の第三大陸へと再び送り込みました。
しかし、統合戦争の終了とともに人口は減少に転じ、管理世界の一員となった後、新暦30年代から40年代にかけては「優遇措置」で釣ってまで「統合戦争時代のカロエスマール移民」の子孫を可能な限り呼び戻したりもしました。
迷走と言えば、確かに、ヒドい迷走ぶりですが、その「移民帰還事業」には、カロエスマールの「歌姫」アディムナ・サランディスも協力したのだと伝えられています。
【アディムナは当時、カロエスマールでもクレモナ本土でも、知らない者など一人もいない
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