シスト
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よ!」
明るい笑顔のココア。そんな笑顔に迫られれば、きっと紗夜もはっきりと断りを突っぱねることはできないだろう。
「まあ、今日は急ぎの予定もないですし……夕方までに帰れればいいですよ」
「やった!」
手を叩くココアが、紗夜に抱き着く。
「それで、場所はここなんだけど、紗夜さん分かる?」
ココアがハルトの手にある地図を引っ張り、紗夜の目の前に押し出す。
少し考えた紗夜は、「そうですね」と頷いた。
「まあ、見当は付きますけど……しかし、参加するなら、私も宝物が必要ですね。何かあったかしら……?」
紗夜はそう言いながら、自らの腰に付けたポーチを探る。やがて、ゴソゴソと中を掻きまわしていた彼女は、「ありました」と何かを取り出した。
「それは?」
「ピックです」
紗夜が手にしているのは、黒い三角形に近い形をしたプラスチックだった。とても小さなそれは、ハルトには全く見当の付かない物だった。
「ピック?」
「なにそれ?」
ハルトと可奈美が同時に首を傾げた。
「ピックって、ギターのピック?」
ココアが紗夜の指を覗き込みながら尋ねた。
「ギターのピック?」
「ほら、ギターって、鳴らす時手に小さいパーツをもってやるでしょ? あれ、ピックって言うんだよ」
「……ギターって、指でやっているんじゃないんだ」
ハルトは自らの無知を思い知りながら、紗夜のピックに手を伸ばしてみる。
紗夜からピックを借りたハルトは、その表裏を眺めてみる。
「ギターって、これで奏でるんだね。それじゃ、音楽好きな人とかにとってはお宝かも」
紗夜へピックを返しながら、ハルトは頷いた。
受け取った紗夜は、ピックをポーチに入れ直す。
「松菜さん、少し変わりましたか?」
「へ?」
その問いに、ハルトは思わず素っ頓狂な声を上げた。
「そう?」
「どうしてでしょう……何か、明るくなったような……?」
紗夜の発言に、ハルトはどこか胸の内が熱くなるような感じがした。
表情が変わってしまう前に、ハルトは口走る。
「そ、それじゃあ紗夜さんを加えて、シスト再開といこっか!」
誤魔化した。
そんな顔をしているのは、クスクスと肩を揺らす可奈美だけだった。
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