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第百五話 秋のイベントその五

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「ほら、野党の一人だけの政党の議員さん」
「ああ、女の人のな」
 明男もわかって応えた。
「元弁護士の」
「あの人東大出てるのよ」
 学歴で言うとトップのこの大学のというのだ。
「しかも法学部首席よ」
「凄いよな、学歴は」
「けれどああよ」
「そうだよな」
「学歴で言うとダントツでも」
「ああなんだな」
「そうよ、学歴はね」
 これはというのだ。
「目安にはなっても」
「人を見るな」
「全部じゃないわよ」
「そうだな、東大法学部首席でもな」
「ああだから」
「まさにああ、だよな」 
 明男はまさにと頷いた。
「本当に」
「学歴にこだわってもね」
「意味ないな」
「それよりもどう生きられるか」 
 このことがというのだ。
「大事よ」
「そうだよな」
 弟は姉のその言葉に頷いた。
「サラリーマンになってもな」
「なって」
「それからどうなるか」
「それがよ」  
 まさにというのだ。
「大事よね」
「そうだな、しかしな」
「しかし?」
「いや、俺大学行きたいけれど」 
 明男は真顔で言った。
「幾らいい大学出てもな」
「東大法学部でもね」
「それが首席でもな」
「ああした人にはね」
「なりたくないな」
「そうよね」
「っていうかまともにはな」 
 最早という口調で言うのだった。
「見えないからな」
「しかもあれで元弁護士さんよ」
「弁護士さんになるのもな」 
 これもというのだ。
「あれでか」
「なったのよ」
「不思議だよ、それが」
「学校のお勉強は出来ても」
「それだけか?」
「そうじゃない?」
 こう弟に話した。
「そうじゃないとね」
「あんな風じゃないか」
「他のことは何もね」
 学校の勉強以外はというのだ。
「駄目で」
「それでか」
「ああじゃないかしら」
「そうだとな」
 明男は姉の話に真剣な顔で言った。
「俺も努力しないとな」
「学校のお勉強以外のこともね」
「さもないとああなるな」
「どんな大学出てもね」
 それでもとだ。かな恵も応えた。
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