第二章
[8]前話
彼にとって猪場は過去の人だった、だが。
「えっ、平穏が竹刀持って猪場さんに向かっていってか」
「ああ、素手のあの人にな」
友人はクラスで百瀬に話した、二人共黒の詰襟姿である。
「一年の娘体育倉庫に連れ込んで襲おうとしたら」
「あいつそんなことまでしてたのか」
「たまたま倉庫の掃除に来た猪場さんに見付かって」
「それでか」
「通報すると言われて逆上してな」
そうしてというのだ。
「持ってた竹刀で突き浴びせたら」
「そうしたらか」
「逆に突きをやった竹刀が折れてな」
そうなってというのだ。
「びくともしなかった猪場さんが平穏捕まえてな」
「そうしてか」
「ブレーンバスターで一撃だったらしいぜ」
「それでか」
「ああ、それで平穏大きい方まで失禁してな」
そうなってというのだ。
「警察に通報されて逮捕されたんだよ」
「それで今学校にいないか」
「そこから警察でこれまでの虐待だの性犯罪だの汚職だの見付かってな」
「刑務所に行くか」
「そうなるみたいだな」
一八〇程の背で丸々と太った色黒でパーマの小さな目のジャージ姿の彼の姿を思い出しながら話した。
「もうな」
「ざまみろだな、しかしあいつの突き受けてびくともしなかったんだな」
「ああ、あいつ剣道五段だけれどな」
「それで体重百キロはあったよな」
「そんな奴の突き受けてもな」
「びくともしないでか」
「捕まえてな」
そうしてというのだ。
「一撃で倒したんだよ」
「凄いな、じゃああの人は」
「今もだな」
「最強だな」
「そうだな、オーラは出なくても」
「普段は、だろうな。けれどな」
それでもとだ、友人は百瀬に話した。
「襲われていたところを助けてもらった娘が言うには」
「オーラ出てたか」
「凄くな、それでな」
そのうえでというのだ。
「気迫も桁外れだったみたいだし」
「いざという時は出るんだな」
「みたいだな、あの人は今でもな」
「最強か」
「そういうことだな、そういえば今も逞しいしな」
七十を過ぎてもというのだ。
「トレーニングはしてるんだろう」
「そうなんだな、最強は変わらないな」
「そういうことだな」
こう百瀬に言い百瀬もそうだなと頷いた、そして彼を見る目が変わった。かつての最強は今も最強であるのだと。
元最強とは思えない 完
2023・11・20
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