暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第179話:一筋の涙
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リオストロは張り倒したくなった。

「……さぁね? どういう意味か、考えてごらんなさい?」

 これを話すと計画が最終段階に近付いている事が彼らにバレる。それは同時にサンジェルマンの立場、そして延いては彼女の命にも関わりかねない重要な内容。流石にそんな事をおいそれと話す訳にもいかず、カリオストロは敢えて挑発するような物言いで言葉を濁した。
 対する颯人は、そのカリオストロの反応から様々な可能性を模索する。予想出来る事は幾つかあるが、この場では生憎と情報も頭脳も足りない。

 何よりも、一番聞きたい内容に関しては聞き終えた。これ以上は無意味な腹の探り合いにも発展しかねないので、ここは大人しく引き下がる事を選んだ。

「ま、いいさ。どの道、アンタがここに居る上に、もう1人の幹部は脱落したか暫くは動けない今、結社の動きは今鈍いだろうから、そんなに焦る必要は無いだろ。違うか?」

 確認する様な颯人の言葉にカリオストロはギリリと歯軋りする。そこまで分かっていて敢えて聞いて来たのかと思うと、おちょくられたような気がして腹が立つ。

「とっとと失せなさい」
「おぉ、こわ。それじゃ、要望通り退散させてもらうよ」
〈テレポート、プリーズ〉

 魔法で颯人がその場から消え、残されたカリオストロは不貞腐れた様にベッドに横になるとそのまま寝息を立て始めた。何と言うか、彼とのやり取りで色々とリズムが乱された。今は何も考える気にはなれない。

 一方…………カリオストロの前から姿を消した颯人は、奇しくも彼女と同じく自室のベッドの上に横になっていた。が、胸の内で抱える思いは彼女とは違い複雑なようで、ベッドの上で仰向けに横になると腕で目元を覆っていた。

「父さん……母さん……」

 1人だけの部屋に、囁くような彼の声が響く。その目元から一筋の涙が零れた事に、気付く者は誰も居なかった。
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