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第四十三話 弔後その十五

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「僕はね」
「その言葉通りに」
「なって欲しいよ。それは適わないと思っていたけれど」
 それでもというのだ。
「今はね」
「希望が持てたわね」
「今の彼は嘘を吐かないから」
 だからだというのだ。
「その言葉もだよ」
「信じられるわね」
「うん、そして」 
 そのうえでというのだ。
「きっと、とね」
「思えていて」
「希望の素晴らしさも」
 持ったそれのというのだ。
「自分のものとしてね」
「実感出来ているわね」
「いいものだね」
 庚に微笑んで話した。
「希望は」
「あらゆる災厄に勝るものよ、希望は」
「パンドラのお話だね」
「ギリシア神話のね」
「そうだったね」
 牙暁はその話を思い出していた、ある女が開けてしまった箱そしてその中にあったあらゆるもののことを。
「あの箱を開けてしまって」
「この世にあらゆる災厄が広まったわ」
「そうだったね」
「けれどね」
「最後にあったのは希望」
「そうよ、希望が残って」
「人間は生きていられる」
「この世に厄介なことは多いわ」
 災厄はというのだ。
「それこそ人がいる限りね」
「災厄はあるね」
「人そのものと言っていい位に。けれど」
 それでもというのだ。
「それと共に」
「希望があって」
「希望はね」 
 まさにそれはというのだ。
「あらゆる災厄にも」
「勝さるね」
「そうよ」
「ずっとそう言われても信じられなかったけれど」
「今は違うわね
「そう思えてきたよ」
 庚に顔を向けて答えた。
「僕も」
「運命が変わるのを見て来て」
「そうしてね」
「そうね、ならね」
「希望を持ってだね」
「そしてね」
 そのうえでというのだ。
「最後まで皆と一緒にいるよ」
「そして戦いが終われば」
「僕も目覚めて」
 そしてというのだ。
「起きてもね」
「皆と一緒にいるわね」
「そうなるよ。じゃあ」
「ええ、お墓参りに行って来るわね」
「そうするね、見ているよ」
「それじゃあね」
 庚も微笑んで応えた、そうしてだった。
 二人は深い眠りに入った、その眠りから覚めるとそれぞれまた動いた。戦いは今は干戈を交えてないが続いているからこそその為に動いていた。


第四十三話   完


                   2023・9・8
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