第3部
ジパング
オロチとヒミコ
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チはヒミコ様として振る舞うことが出来た。ヒミコ様と接触したときに男性の姿をしていたのも、その男性を喰ったからだろう。
それならばオロチを倒したときに見た本物のヒミコ様が現れたのも納得が出来る。オロチの中にいたヒミコ様の魂が、オロチが死んだことによって解放されたのだろう。だから彼女は天に召されたのだ。
「謎は解けたけど……、なんだかもやもやする結末だね」
シーラの目には、深い悲しみの色が滲んでいる。それはナギやユウリも同じだった。私も、どうしようもない辛さと閉塞感で胸が苦しかった。
「とりあえず、オロチは倒せたんだ。ヒミコの願いは果たせたんじゃないのか?」
ユウリの一言に、全員が弾かれたように顔を上げる。
「……はは、そうだよな。オレたちはヒミコの願いに応えたんだ。空にいるヒミコ……いやアンジュも、本望だと思うぜ」
「うん……、そうだよきっと」
私は自分自身に言い聞かせるように、天を仰いだ。きっとアンジュさんは、今ごろほっとしているだろう。でなければあのとき、微笑んだりなんかしてないはずだから。
「うん、もう生け贄を出さなくていいんだもんね」
私たちの言葉に、シーラも納得したようだ。
「あ、あの……、先程ヒミコ様は亡くなったと仰っていましたが……?」
戸惑いを隠しきれない侍女の問いに、皆が一斉に振り返る。そういえば案内されてから、ずっと近くにいたんだった。
「ああ。今まであんたたちが崇めていたのは、ヒミコになりすましたオロチだった」
低い声で、ユウリはきっぱりと言い放つ。侍女はその言葉を理解した途端、唇をわなわなと震わせた。
「あ……、ああ……!」
ショックのあまり声も出せない侍女は、逃げ出すようにこの場を走り去ってしまった。
「まあ、そうなるだろうな」
ナギが予想していたかのように逃げ出す侍女の後ろ姿を目で追いながらつぶやいた。
「だが、どのみちこの国が乗り越えなければ行けない問題だ」
「ユウリちゃん!?」
日記を懐に入れるなり踵を返すユウリを、シーラは呼び止める。シーラはユウリが何をしようとしているかいち早く気づいたようだ。
「きっと皆、信じてくれないと思うよ?」
その言葉には、ユウリの身を案じる思いも込められているように感じた。その瞬間、ユウリが何をするつもりか私にも理解できた。
「アンジュの願いに応えた以上、この国の行く末を導くのも俺たちの責任だ」
落ち着き払った声で答えるユウリの目には、彼なりの覚悟の色が宿っていた。仲間として、その覚悟に私も応じなければならない。
「そうだね。この国の真実を、私たちがこれから伝えなきゃ」
それがこの国を案じていたアンジュさんの遺志だから。
ナギも頷くと、シーラに視線を移す。シーラも諦めたように小さく息を吐いた。
そして、気持ちを一
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