第3部
ジパング
オロチとヒミコ
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人の身長ほどの大きさの大蛇へと姿を変えた。それはこの国の膿である、オロチそのものであった。
オロチは人の姿を借りたばかりか、言葉まで話した。しかも、私に交換条件まで出してきたのだ。
『これ以上村を襲われたくなければ、生け贄を出せ。若くて美しく、清い身体の女が良い。あれは上質で、喰えば力も漲る。お前も上質ではあるが、いささか年を取りすぎた』。そう言ってオロチは下卑た笑いを浮かべた。この場で呪文でも放とうかと思ったが、オロチの力を警戒した私は、渋々要求に応じてしまった。それから、村の娘を生け贄に出さなければならないと言う、地獄の日々が始まった。
『……』
皆、黙ってはいるが、心の中は私と同じ気持ちだろう。このときから、生け贄を出すという風習が始まったのだ。これから先のことを考えると、胸が張り裂けそうになる。
??◯月☆日、曇り。もう我慢できない。私はヒミコとしての最後の仕事をしようと思う。あいつの力はこの国の人間たちだけでは太刀打ちできないほど強大なものになってしまった。しかしそれは総て、判断を怠った私の責任だ。私がケリをつけなければ。
あいつの棲みかはわかっている。この国で一番高い火山の洞窟だ。私の力で旅の扉を作り、あいつに奇襲をかける。これが最後の賭けだ。
だがもし私がこの世にいなくなったら、この国はいずれあいつに乗っ取られるだろう。人間に姿を変えられるあいつならば造作もないことだろう。ただ生け贄を欲している以上、国を滅ぼすようなことはしないはずだ。それでもこの国にとっては化け物に支配された地獄と化すだろうが……。
しかしもしこの文字が読めるほどの知識のある者か、この国を訪れるほどの度量と力のある異国の者がこの本を手に取ることがあったら、我が民を救って欲しい。ヒミコとして民の目線になって生きてきて、彼らには国を捨ててでも生きて欲しいと私は願っている。もしそれを叶えてくれるのならば、この部屋の隠し部屋にある宝を好きなだけ持っていって欲しい。頼む、私の遺志を、どうか継いでくれ。
日記は、ここで終わっている。最後は殴り書きに近い筆跡で、だいぶ切羽詰まっていたのが見て取れる。日記がここで終わっていると言うことは、ヒミコ様、いやアンジュさんは??。
「本物のヒミコ様は、もう亡くなってたんだね」
抑揚のない声で、私は呟いた。彼女はおそらくこの日記を最後に、オロチと対峙して、そして命を落とした。けれどその後もヒミコ様はこの国を守る巫女として村人達から崇め奉られている。それはなぜか??。
「ああ。おそらくオロチがヒミコを喰って、ヒミコの能力を取り込み、自らヒミコになりすまして生け贄を喰らい続けていたんだろう。日記から察するに、オロチは取り込んだ相手の能力だけでなく、外見や記憶、知識も自分のものに出来るみたいだったな」
だからオロ
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