第3部
ジパング
オロチとヒミコ
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読めるんだろ?」
『??あ!!』
確かに、この日記の文字は普段私たちが使っている言葉で書かれている。この国の人ならこの国で使われている文字を使うのが普通ではないだろうか?
「なあ。あんた、この文字が読めるか?」
ユウリが侍女に日記を見せる。けれど彼女は眉をひそめる。
「すみません。異国の文字は私には読めません……」
「そうか」
予想通りの反応だと言う風に、ユウリは再び日記に目を移した。私たちも再び頭を突き合わせると、次の行を読み進める。
??そんな自分に辟易している。早く自由になりたい。私がヒミコではなく、本当はアンジュだと言うことを、誰かに打ち明けられたらどんなに楽だろうか。
「アンジュ!?」
想定外の人物の名に、私は思わず声を上げる。
「アンジュって、確かサイモンの仲間の一人だったよな?」
「そ、そうだった気がする」
ナギが確認するように私に問う。その答えに驚きのあまりついどもって答えてしまった。
つまり、ヒミコ様は本当はサイモンさんの仲間のアンジュさんってこと!?
頭の整理が追い付かない中、一足先に次のページを眺めていたシーラが声を上げる。
「ねえ皆、ここ読んでみて」
彼女が指差した文章を、黙読する。
??◯月△日、雨。とうとうあいつは村の家畜を襲うだけでは飽きたらず、村人を喰ってしまった。しかもあいつは、その喰った人間の能力を取り込むらしい。これ以上あいつを野放しにしてしまえば、この村だけでなく、ジパングと言う国そのものが滅びてしまう。折角魔王討伐の旅を終えて、国を守ろうとヒミコとして生きてきたが、我慢の限界だ。サイモンや仲間と共に戦って得た経験と知識を生かして、この国に巣くう膿を取り除かなくてはならない。
この内容からでも、アンジュさんがヒミコとしてこの地を守ろうとしていたのがわかる。けれど、『あいつ』っていうのは、もしかして……。
「あいつってきっと、オロチのことだよな?」
ナギに先を越され、思わず私は彼を見上げる。しかしそれは既に皆が気づいていたことだった。
「うん。それでこの内容だと、オロチは喰った人の能力を取り込むって書いてあるよね。てことは、あの強さは人を喰い続けた結果、あれほどの強さになったって訳だよね」
「あの魔物の本来の強さではなかったと言うことか」
そうは言っているが、シーラもユウリも、納得しきれない顔をしている。例えそうでも、言い訳じみた形にはしたくなかった。
先の展開に一抹の不安を抱きながらも、ユウリはさらに次のページを開く。
??◯月□日、晴れ。突然私のもとに、蛇のような顔をした男がやってきた。屋敷を訪れたその男は、いかにも不気味な笑みを浮かべて私を舐め回すように見ている。人払いをして欲しいと頼まれ、私と男の二人になった途端、男は
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