第3部
ジパング
オロチとヒミコ
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いようだった。一応オロチを倒したところを見た人もいたはずだが、オロチを倒したことよりヒミコ様がいなくなったことの方が、この屋敷にとって重大な事件のようだ。
そして案内されたのは、昨日初めてヒミコ様に会った場所の奥の部屋だった。この部屋が最も被害が大きく、木製のカーテン??侍女の説明によると『御簾』というらしい??も壊されて、だらしなくぶら下がっている状態だ。けれどそのお陰で、その奥にある部屋がよく見えた。
剥き出しとなっているその部屋を覗いてみると、壁には至るところに白い紙や木の葉や枝などがぶら下がっている。白い紙には見たこともない文字が長々とかかれているが、この国特有の文字なのか全く読めない。この光景を見てここが『祈祷部屋』だと侍女に教えてもらわなければ、何の部屋なのか皆目検討もつかなかった。
「ヒミコはこの部屋から出てないのか?」
「は、はい。途中あなた方を迎えに一時ここを離れたときに他の者に任せましたが、誰もヒミコ様がこの部屋を出るところを見ていませんでした」
部屋からは出ていないのに、部屋には人がいた痕跡がない。この矛盾した事態に、私たちは首を捻った。
するとユウリは、部屋の隅にある本棚に目を留めた。そこに並べられているのは本というより、数枚の紙の束を紐で閉じたような簡易的なものであったが、この国では割とポピュラーなものだと言うのが雰囲気でわかる。
「それはヒミコ様の私物です! みだりに触れたりすれば神罰が……」
「あんたらはヒミコを神か何かだと思ってるのか?」
振り向き様に言い放ったユウリの言葉に、制止の声を上げた侍女の動きが止まる。
「他人と違う力を持っているとしても、彼女は人間なんだろ? なら神罰なんて関係ない」
ユウリは本棚に目線を戻し、何事もなかったかのように目の前の本に手を伸ばす。
「それに、彼女を見つけたいならそんな下らないことを言ってる場合じゃないだろ。少しでもいなくなった手がかりを探す方が大事だろうが」
彼の最もな意見に、私も頷いた。そして、彼が手に取った本をパラパラとめくり始めると、皆こぞって覗き込んだ。
「これって……」
そこには、ヒミコ様自身が書いたと思われる手記が記されていた。
??◯月?日、晴れ。今日も村の外であいつが暴れている。村人達が手を出せない中、私は自分の素性を明かせないまま、村人たちをだまし続けている。
これは、本当にヒミコ様の日記なのだろうか? 文章から感じる彼女の人物像と、昨日見た彼女の言動とでは、同一人物とは到底思えない。
すると、突然シーラが頭一つ分身を乗り出して日記を凝視している。なにか気になることでも見つけたのだろうか。
「ちょっと待って。この部屋の壁に貼ってあるお札みたいなのに書かれてる文字は読めないのに、なんであたしたち、この日記が
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