第3部
ジパング
オロチとヒミコ
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最初に会ったときより随分と晴れ晴れとした顔をしていた。
ヤヨイさんもどこか吹っ切れたような様子でユウリの方を見つめているが、当の本人は知らん顔。いや、どちらかというと意識的に視線を合わせないようにしているように見えた。
二人に別れを告げ、私たちは早速その足でヒミコ様の屋敷へと向かう。しかし屋敷に近づくにつれ、何やら物々しい雰囲気を感じるようになった。
屋敷のすぐそばまで向かうと、数人の人だかりが出来ていた。その中でユウリは、切羽詰まった顔であちこち走り回っている女性に声をかけた。
「随分騒がしいが、何かあったのか?」
声をかけられた女性は、ユウリを一目見て一瞬赤くなったが、すぐにはっとなり、慌てて説明した。
「実は、昨日からヒミコ様が行方不明なんです!」
「えっ!?」
私は思わず声を上げたが、質問した本人であるユウリはまるでその答えを想定していたかのように冷静だった。そしてさっさとこの場を去ろうとした女性を引き留めると、
「俺たちもヒミコを探している。何か手がかりがあるかもしれないから、屋敷に案内してくれないか?」
そう言って、真摯な表情で見つめた。その様子が彼女にとって魅力的に映ったのか、彼女は顔を赤くしながらも素直に頷いた。
「わ、わかりました。ではこちらへ……」
女性はすぐに屋敷へと私たちを案内してくれた。どうやら彼女はヒミコ様の侍女の一人らしい。たまたまなのか、それともユウリが彼女を最初から屋敷の関係者だと見抜いていたのかわからないが、とにかくすんなりと屋敷に入ることが出来た。
屋敷の中は、外以上に騒然としていた。廊下をバタバタと走る音や、ヒミコ様の所在を尋ねる声、見つからない苛立ちから来る怒号などが聞こえてくる。
「あっ、あなたたちは!?」
入るなり私たちに気づいてやってきたのは、昨日私たちを案内してくれた侍女だった。生け贄として旅の扉に入った私たちが再び目の前に現れるとは思いもしなかったのか、目を白黒させている。
「詳しい話はあとだ。ヒミコは今も行方不明なのか?」
侍女はユウリの姿に混乱しつつも、今はそれどころではないといった様子で短く頷く。
「は、はい。昨日あなたたちを湯殿へと案内したあと、ヒミコ様は祈祷部屋でお祈りをしていたんですが、それからしばらく経っても部屋から出て来なかったんです。そしたら急にオロチが部屋から現れて……」
そこまで言って、侍女は突然言葉を詰まらせた。まさか、ヒミコ様はオロチに襲われたんじゃ……。
「その祈祷部屋を見せてもらっても構わないか?」
「あ、はい! ですが、オロチによって部屋はほぼ壊滅状態になっていますが……」
それでも構わない、と一言言い放つと、ユウリは彼女を強引に引き連れた。
途中、屋敷の関係者がすれ違うが、皆私たちのことなど気にしていな
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