第三部 1979年
曙計画の結末
篁家訪問 その2
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ずかな情報からその様な結論に至るとは、鋭い女性よ』
マサキは思案になやむ。
もう秘密が露見するのは、時間の問題だ。
次元連結システムの事を聞き出そうとするミラの覚悟のほども、わからなくはない。
必然、篁の話に拠って、さらに状況証拠をあつめ、結論をかため直していることだろう。
その様に、彼には案じられて来た。
こうなったら、徹底的にミラを利用してやろう、と肚を決めた。
すると、マサキは滔々と持論を開陳して見せた。
「もし、俺がとてつもない兵器を持っていると世間に発表したらどうなる。
例えば、この京都のほとんどを一瞬にして消滅させる兵器をな」
マサキの言葉から、ミラは何かふッと、胸が騒いだ。
「混乱が起きるか、それとも世間は静かか。
どう思う、ミラさんよ」
マサキの口元の笑みが、広がる。
ミラは、彼流のコミュニケーションなのだと感じた。
気の利いたことを言ったつもりらしい。
ミラは頭の中で、それらしいことを言って、話を戻そうとした。
「きっと持っている。持っているからこそBETAに勝てる。
勝てる自信があるからこそ、落ち着いていられるのよ」
マサキの理論は、強引だった。
「そう、落ち着いていられる。
この汚れ切り、腐敗した世界。
金権にまみれ、人間の心を忘れた獣たちの住む日本を破壊し、消滅させることが出来るからな」
マサキは、会心の笑みを漏らし、タバコに火をつけ始めた。
部屋中の空気が落ちてくるような圧迫感に、ミラは思わず身をすくめる。
「貴方がいつも思っている可愛いお嬢さんとは、まるでかけ離れた世界ね」
「そうでもないさ。
夢だの、希望だの、正義だの……裏付けする力がなければただの絵空事さ」
マサキは、唇に傲慢な笑みを浮かべる。
「この冥王、木原マサキを突き動かしたもの。
それはアイリスディーナへ愛だよ、愛。
あの娘御は、家庭の団欒はおろか、世間のことも、何一つ知らなかった。
だからこそ、悲運に身にゆだねるしかない女の一生を救ってやりたかった。
ただせめて、人の真情をアイリスディーナに与えてやりたい」
「東ドイツには、男女の真実、それすらないのですか」
「人口の1パーセント以上が、秘密警察の密偵という住民総監視社会。
その様な火宅の中で、どうして真実が生れ出ようか」
マサキは腹から言った。
自分の身にも、くらべて言ったことだったが。
「乙女の一途な執念、これほど恐ろしいものとは……知らなかったよ」
すでに、あきらめ顔のミラは、こう彼に返した。
「正直言って、これは想像も付かなかったわ……。木原さん」
「こちらの肚を、見せたまでさ」
マサキは、話し終って、ほっとした。
次元連結
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