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冥王来訪
第三部 1979年
曙計画の結末
篁家訪問 その2
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「何の話だ」
 マサキの目的を知るには、相手の懐深く入り込むことである。
ミラは、マサキに一歩でも近づこうと決心した。
「私はあなたが創ろうとしているものには、協力は惜しみません」
篁がごくりと音を鳴らして、清酒を呑んだ。
「いいのか」
 ミラは目を細めて、マサキに近づいた。
二人の距離は、1尺と離れていない。
お互いの息遣いさえ、肌で感じられるほど、近かった。
「いいの」
「本当にか!」
「ただし条件があります」
マサキは開き直ったように、ミラを、彼女の目を見据えた。
「どういう意味だ」
 マサキの手を胸に押し付けながら、目を潤ませる。
しがみつこうと思えば、しがみつけるような距離までぐっと顔を近寄せる。
「木原さん、貴方がどういう意図で近づいてきたか、よくわからないの。
一緒に新型機開発をする為には、隠し事をしてほしくないの」
 ミラは美しい声で言った。
マサキの秘密を隠そうとする態度を、知らないかのように。
「そうか……わかった。
では、ミラよ。お前から知りうる情報を話してくれぬか」

 日本・米国・ソ連の3か国がわずかな時間の間に、それぞれ違った形で木原マサキと接する機会があったにもかかわらず、ゼオライマーの秘密が、この世界で露見しなかったのは、なぜか。
日米ソの3か国が、それぞれの思惑の中で密かにゼオライマーを解明しようとしたからである。
 既に応用された技術や戦術機の改良だったのならば、研究機関で解明したり、多国間で調査をしたであろう。
しかし、次元連結システムという特殊なシステムの為に、日本もソ連も慎重になっていた。
 だが米国だけは、2つの国は少し違った。
それには、いろいろな要素がある。
 まず、G元素というBETA由来の新物質の研究が進んでいた点である。
それは、世界で初めて核爆弾を完成させたロスアラモス研究所を持っていたことが、起因するのかもしれない。
 ここで特筆すべきは、ミラの積極性だった。
マサキの各国政府への近づき方は、異常である。
 ミンスクハイヴ攻略を通して、各国の首脳に働きかけた点は、不振この上ない。
これは全て嘘だ、裏に何かがあると考えた。
 何事にも積極的なミラは、自ら進んでマサキに真意を尋ねた。
それも生半可な事ではない。
自分の知りうる情報を、全て明かして見せる事であった。

「上院議員を務める父方の伯父にきいたんだけど、どうやらG元素爆弾は完成したらしいの。
ロスアラモスでは、今年の夏までに起爆実験を行う予定なんだけど、新聞社にすっぱ抜かれちゃってね」
マサキは、胸ポケットからつぶれたホープの箱を取ると、タバコを抜き出した。
「ほう」
言葉を切ると、タバコに火を点ける。
「G元素には、新型爆弾を作るのに必要なグレイ・イレブン
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