第三部 1979年
曙計画の結末
篁家訪問 その3
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とミラがマサキたちの前に戻ってきた。
マサキが呼んだのだ。
「実は、二人に頼みがある。日米の親善を深めてほしい」
マサキの唐突な提案に、篁は色を変えて、
「よくもぬけぬけと日米親善などといえるのだな。君は。
両国の間の関係は必ずしも穏やかではない」
「先のF−4ショックも、あって日米間の感情は悪化してしまった面がある」
F−4ショックとはBETA戦争初期に日本に納入されるはずだった戦術機12機。
欧州での戦線拡大を理由に、次年度発注分までが、欧州に横流しされた。
このことは、日本の財界や国防関係者をして、米国に失望させる原因となった事件である。
「大きな誤解があるようだな」
「何!」
「たかが、戦術機数台で」
「たかが戦術機だと」
「そうだ、たかが戦術機だ。
戦争の成否に比べれば、たかが戦術機。
求めるべきものは戦争の勝利よ」
「何を馬鹿な事を……同盟関係にある日米二か国ですら戦争の合意が不十分なのに」
「だからこそ、篁。お前に頼んでいるのだ」
マサキは着ていた丹前の袂から、ホープの箱とライターを取り出す。
「日米はあの戦争の前から、長い間争い続けていた。
このまま争い続ければ、双方が疲れ果て、いずれはBETAに滅ぼされてしまう」
おもむろに火を起こすと、タバコに火をつけた。
「いや、狙っているのはBETAばかりではあるまい。
北のソ連や国際金融資本など、今のままでは危ういのは、火を見るよりも明らか」
火の点いたタバコを持ったまま、両手を広げ、
「だが、日米が手を握るには、これまでの怨念があまりにもありすぎた」
不動明王の天地眼を思わせる目が、篁を射抜いている。
彼は、動くことが出来なかった。
「篁、貴様は米国南部の名門の令嬢を娶った。
お前の寵愛を受けたミラとの間に子供を……」
「……」
「ミラには、なんとしても息子を産んでもらうしかない」
マサキはこの時、よもやミラが懐妊しているとは知らなかった。
彼女が、篁家の後継ぎをその身に宿しているとは夢想だにしなかった。
「そうすれば、その子は篁家とブリッジス家の血を引く子供だ。
両国の名門の血を引く子供になる。
その子が日米親善の架け橋の一つとなる」
マサキは唇をほころばせた。
篁は、自分の心の奥底まで見透かされたような気がして、俯いた。
「なんとしても、俺はお前たちの関係というものは守って見せる。
BETAを撃つためにも、ソ連を破滅させるためにも……」
マサキは簡明に答えてやった。
どこからともなく、すすり泣きの声がながれていた。
ミラが突っ伏すような格好で、嗚咽していたのだ。
そんな様子を不憫に思ったマサキが尋ねた。
「なにを泣いていた?」
「はい」
「遠い他
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