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神々の塔
第四十四話 狐狸その六

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「とことん嫌われてな」
「当然やね」
「ああ、振った女とその友達連中もな」
「嫌われて当然やね」
「人を平気で裏切ったり残酷な性根見て」
 そしてというのだ。
「どうして好きでいられるか」
「その通りね」
 アレンカールもそれはと応えた。
「あの人達が何で嫌われてるか」
「まさにその本性を曝け出したからや」
「そのお話から」
「それでや」 
 まさにその為にとだ、芥川はアレンカールにも話した。汚いものを心底蔑んでいる顔でそうしたのだ。
「嫌われるんや」
「そうなるわね」
「あの女はかちかち山の兎や」
 太宰の方のというのだ。
「あの兎は幾ら美少女でもな」
「その内面はね」
「邪悪そのものや」
「人の痛みや苦しみがわからない」
「それで嬉々として嬲り殺しに出来るな」
 嫌いだという些細な理由でだ。
「ほんまの邪悪や」
「邪悪とは何かっていうと」
「色々な種類があると思うけどな」
「あの兎もそうね」
「人の気持ちを踏み躙ってな」
 狸が自分を好きだという感情をだ。
「それで痛みも苦しみも理解せんで」
「延々と嬲り殺しにして」
「何とも思わんのはな」
「邪悪の一つね」
「吐き気を催す邪悪と言ってもや」
 それでもというのだ。
「差支えない」
「そこまでの邪悪ね」
「あの兎はな」
「原典だと残酷でもね」
「敵討ちで悪を憎む気持ちはあるが」
 例えそれが残虐なものであってもだ。
「太宰さんの方はな」
「そもそも狸はお婆さん殺してなくて」
「自分に惚れただけやからな」
「そんな狸を嬲り殺しにするのは」
「邪悪や、狸は悪くない」
 太宰のものではとだ、芥川は言い切った。
「ただださいだけ、惚れたが悪いかやない」
「惚れる、好きになるのの何処が悪いねん」
 中里も顔を顰めさせて言った。
「誰が誰を好きになってもな」
「その相手に交際してる人とかがおらんとな」
「悪くないわ」
「絶対にな」
「惚れたが悪いかなんて言葉はないわ」
 中里は今度は忌々し気に言った。
「惚れること自体はな」
「何も悪うないな」
「おっさんが美少女を好きになってもや」
 それが太宰のかちかち山の主題だ、尚狸のモデルはオリンポスの果実等で知られる作家の田中英光だという。
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