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イベリス
第百二十四話 相手の好みその十

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「その分ね」
「そうしたことも経験するのね」
「そうよ」
「それも人生なのね」
「ええ、このことも覚えておいてね」
「そうしていくわ。皆ずっと一緒には」
「人はそれぞれの人で何時死ぬかわからないからね」
「それは無理ね、そういえば」
 咲はモコも見た、今は寝ている。
「モコもとも」
「そうよ、モコなんか特にね」
「犬は人より寿命が短いから」
「だからよ」
 その為にというのだ。
「お父さんもお母さんも咲もね」
「モコその時を」
「ちゃんと見届けることよ、そうすることもね」
「家族なのね」
「ええ、犬も猫も最後の時までね」
 世を去るその時までというのだ。
「家族によ」
「一緒にいて欲しいのね」
「だからね」
「モコとも」
「そうしてあげてね」
「そうするわ」
 咲も約束した。
「それじゃあね」
「そう、モコはね」
「犬だからね」
「今言ってる通りにね」
「私達よりも早くね」
「何かない限り」
 家族にというのだ。
「モコの方がよ」
「早く死ぬから」
「それまでの時間を大切にして」
 一緒にいるそれをというのだ。
「それで最後はね」
「傍にいることね」
「最後まで一緒だったら」
 それならというのだ。
「モコだって幸せよ」
「ずっと家族と一緒だから」
「このこともよ」
 ずっと一緒にいることもというのだ。
「ペットには嬉しいことだから」
「そうすることね」
「そう、それで何かはね」
 それはというのだった。
「残念だけれどね」
「誰でもなのね」
「あるから」
「昨日元気だった人が急にとか」
「本当にあるのよ」
「朝起きたらお亡くなりになったりとか」
「あるのよ」
 実際にというのだ。
「これがね」
「そうしたものだから」
「人生はね」
「私だってそうよね」
「そうよ、誰だってね」
 それこそというのだ。
「明日起きたらとかね」
「あるのね」
「お母さんだってよ、それでね」
「それもまた人生ね」
「それで世の中だから」
 母は咲に真剣な顔で話した。
「覚えておいてね」
「そうするわね、しかし」
「しかし?」
「わかってるつもりでも」
 母の今の話はとだ、咲は言うのだった。
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