第百二十四話 相手の好みその九
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「もうね」
「髪の毛もなくなるの」
「一気に抜けるから」
抗癌剤を使った時はというのだ、癌の様な深刻な病気を抑えるというからにはそれなりの副作用もあるということだ。
「癌になってもよ」
「そうも言えないのね」
「しかも下手したらね」
癌という病気はというのだ。
「死ぬでしょ、癌は」
「癌で死ぬ人多いし」
「だからね」
「癌になっても」
「そうも言っていられないわよ」
太っただの髪の毛が抜けただのというのだ。
「だから健康であるからこそ」
「そうしたことも言えて」
「幸せよ、まだね」
「太らない、髪の毛があることが一番でも」
「そうなのよ」
「まあ幸せなのね」
「四十過ぎて健康でもね」
この場合もというのだ。
「糖尿病と化痛風もあるしね」
「そうした年齢になったら」
「ええ、だからよ」
「健康であって」
「それでそんなこと言えるならね」
それならというのだ。
「その分ね」
「幸せなのね」
「そのこと覚えておいてね」
「わかったわ、けれどお母さんの今のお話聞いたら」
咲は実際に聞いて腕を組んで話した。
「四十代になる頃には人生色々あるのね」
「そうよ、生きているならね」
「それならなの」
「それだけでよ」
生きているだけでというのだ。
「愛別離苦って言うでしょ」
「仏教の言葉だった?」
「そう、それがあるのよ」
「誰でもなのね」
「その中で親戚やお友達がね」
「亡くなっていくのね」
「そのこともね」
まさにというのだ。
「覚えておいてね」
「そうしていくわね」
「生きてるとわかるけれどね」
「今のうちに教えてくれたの」
「ええ、いいとも思って」
それでというのだ。
「知っていてもいいしね」
「生きてるとそれだけで色々あって」
「周りの人、親しい人達もね」
「亡くなっていくのね」
「そうよ、長生きすればするだけ」
「そうしたこともあるのね」
「死ぬまでね」
「親しい人が亡くなっていくことを見るのは」
咲は眉を曇らせて述べた。
「それは」
「見たくないでしょ」
「やっぱりね」
「けれどそれも人生なのよ」
「そうなのね」
「だから長生きしているなら」
それならというのだ。
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