暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第178話:愛に生きる騎士
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はあり得ない。それこそアンダーワールドの様な特別な条件下でもない限りは。
 だが透とデュラハンの場合は事情が違った。この両者は共に1人の少女を愛し、彼女の為に全身全霊を尽くす覚悟があった。そう、デュラハンもまたクリスの事を愛しているのだ。
 故にデュラハンは、透がクリスをその心までも守ろうと言うのであれば、その存在全てを彼に委ねる事が出来た。

 その姿は、レギオンファントムを狂喜させるには十分な輝きを放っていた。1人の少女の為にそこまで尽せる男の姿は、この上なく美しいと思えるものだったのだ。

 レギオンファントムは切られた傷の痛みも忘れて、ハルメギドを手に襲い掛かる。

「ハハハハッ!」

 振り下ろされるハルメギドを、透はデュラハンの剣で防ぐ。そしてお返しに剣を薙ぎ払えば、レギオンファントムはその場で大きく跳躍し真上から攻撃を仕掛けてきた。

「その荷物を抱えた状態で、どこまで抗えるッ!」

 未だぐったりとした様子のクリスを抱えた透は、当然だが動きが制限される。得意の素早さを活かせない彼など、レギオンファントムからすればいい的も同然だった。

 そう思っていると透は予想外の行動に出た。何を思ったか透がデュラハンの剣を投げてきたのでそれを弾くと、今度は鎧が弾け飛んだ。その衝撃は流石に防げず、バランスを崩して地面に落下する。

「くぅ……!」

 この程度大したダメージにもなり得ず、すぐさま立ち上がると再び透に接近しようと一歩足を踏み出した。
 その時、横合いから何者かが攻撃を仕掛けてきた。仲間の魔法使いが駆けつけたのかと思ったが、振るわれた刃を受け止めたレギオンファントムはそこにあった光景に思わず目を見開く。
 そこに居たのはつい先程透の中へと戻った筈のデュラハンだったのだ。

「何ぃッ!?」

 このデュラハンは何処から出てきたのかと思って、レギオンファントムはふと気付いた。透が先程剣を投げ、鎧をパージしたのはまさかこの為なのではないかと。そう、あの形態の透はデュラハンと一つになる事も出来れば、デュラハンを分かれて行動する事も可能な状態なのだ。
 それはこの魔法を生み出したアルドからしても予想外の結果であろう。本来であれば、透がデュラハンの鎧を最適な形で身に纏う事だけを目的としていた。だが透はデュラハンと本当の意味で心を通わせ、共にクリスを守ると誓い合った。それがこのような形で現れたのである。

 まさかの展開にレギオンファントムが呆気に取られていると、脇腹に強烈な銃弾が突き刺さった。

「ぐぉぁっ?!」

 激痛に視界がチラつく中、銃撃が飛んできた方を見ればそこでは透に支えられたクリスが先程は撃てずに終わったライフルを構えているのが見えた。

「へへっ、ざまみろ……!」

 
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