【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第2章】StrikerSの補完、および、後日譚。
【第5節】元老ミゼットとの、極秘の会話。
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になり、随分と幸せに暮らしている』のだそうです。まあ、それはもう5年も前に聞いた話なんですが」
要するに、『やはり、リゼルの身内は事実上、もうクロノ提督ただ一人だ』と言っても構わない状況なのです。しかし、そうした「身内の少なさ」も、ミゼットにとってはむしろ親近感が湧くものでした。
彼女にも「養子に出した息子(故人)の、他家へ嫁いだ娘らやその子孫たち」とか、「家名を継いだ甥やその子孫たち」などはいましたが、事実上、もう縁は切れてしまっています。今なお多少なりとも通話をする機会があるのは、テオドールの息子に嫁がせた「姪のリアンナ」ぐらいのものでした。
ミゼットが何度か小さくうなずいて納得の表情を浮かべると、一拍おいて、リゼルはまたこんなことを言い出しました。
「それと、実は、もう一つ二つ、お訊きしたいことがあるんですが……」
「どうぞ」
「父の手記には、『今回の南方遠征では、他にも何人か候補者のいる中で、自分が指揮官に抜擢されたのは、あなたの意向によるところが大きかった』という内容の記述もあったんですが、それは本当のことですか? 父の思い違いとかでは無くて」
「ええ。本当のことよ。平時には、元老はあくまでも『象徴的な意味』での最高責任者でしかないから、少なくとも法律の上では、何か具体的な人事権がある訳ではないのだけれど……局の上層部が『誰を選んでも大差は無い』と判断した時には、そのリストを元老に見せて参考意見を聞く、というのも『慣例としては』よくあることだったの。
それで、10年前の5月にリストを見せられた時、その中に彼の名前を見つけて、私は迷わず彼を推薦したわ。彼には早めに准将に昇進して、より自由に動ける立場に立ってほしかったの。
正直に言うと、彼が昇進する糸口になるのなら別にどんな案件でも良かったのだけど、あの時期には、手早く功績を挙げられそうな案件が南方遠征ぐらいしか見当たらなかったのよ。もちろん、その時点では、彼が南方で殉職してしまう可能性なんて、誰も考えてはいなかったわ」
「それは、つまり、今回のヨゴレ仕事も、本来ならば……と言うか、あなたの『心の中の計画』としては……元々、父が背負うはずの仕事だった、という意味ですか?」
「……そうね。もし彼が今も生きていてくれたら、私は迷わず彼に頼んでいただろうと思うわ」
もしそうなっていれば、『艦隊司令官がみずから爆弾艦を特攻させた』という形になるので、『司令官自身が「あの〈ゆりかご〉を破壊したこと自体の是非」を問われて謹慎処分を受ける』というリスクはあっても、誰も降格処分までは受けずに済んでいたことでしょう。
しかし、現実には、あの状況下で『クロノ提督の艦隊を止めて、リゼル提督の艦隊だけを出撃させる』という訳
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