【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第2章】StrikerSの補完、および、後日譚。
【第4節】元老レオーネとの、極秘の会話。
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ことをした』とは言っても、それは『ただ単に「陰の権力者」に逆らうことができなかった』というだけのことなのです。
(ただ無力であるというだけのことが、果たして死に値するほどの罪なのだろうか?)
ザドヴァンはふとそんなことも考えましたが、またすぐに思い直しました。
(……いや。「その地位」にある者にとっては、確かに「罪」なのかも知れない。)
地位とは、本来「その人物」の能力に応じて与えられるべきものであり、それ故に、特定の地位にある者が「その地位に相応の能力」を持っていないことは、ごく控えめに言っても、決して望ましいことではないのです。
それでも、しばらくすると、ザドヴァンはまた、先ほどのレオーネの別の言葉を思い起こしました。
『ただ、無駄に世間を騒がせたくも無いから、あの御老人たちが今日まで生きていたことは、厳重に秘匿するつもりでいる』
(それでは、表向きの話として、「総代」は何故みずから命を絶たなければならなかったのだ? 三脳髄の存在を伏せてしまったら、全く説明がつかないではないか!)
しかし、ザドヴァンがそれを問うと、レオーネはさも当然のことのように、すらすらとこう答えました。
「医師団に命じて、『総代は職務上の慢性的なストレスにより、以前から心神耗弱状態に陥っていた。そのため、元老から直接に辞任を勧告されて、自責の念に駆られ、発作的に死を選んだ』という内容の診断書を書かせるしかないだろうね」
元々が法務官であるザドヴァンの耳には、それは随分と理不尽で「法」を無視した主張に聞こえました。ザドヴァンは思わずこう言い返します。
「あくまで真実を隠蔽すると仰るのですか? 法の裁きを受けるべきなのは、むしろあの三人の方だったと言うのに!」
「君が法務官として、法や真実に拘泥する気持ちは解らぬでも無い。しかし、人の法では所詮、すでに死んだ者を裁くことなどできないよ。彼等が『具体的に』何をどこまで考えていたのかは、もう誰にも解らないのだからね。
それに、こんな『腐った真実』を一般に公開して、一体どうなると言うのだ? 突き詰めれば、『彼等が死を装って以来の、ここ八十年余の管理局の歴史』を、管理局がこれまで積み重ねて来た事績を、丸ごと断罪せねばならなくなるのだぞ。それが、一般社会にどれほどの悪影響を与えると思う?」
言われてみれば、確かにそのとおりでした。
おそらく、事態は、ただ単に『管理局の権威が失墜する』というだけには止まらないでしょう。もしも全管理世界の民衆が『自分たちは、今までずっと騙され続けていたのだ』と考え、その不満を一斉にぶちまけ始めたら、最終的には「管理局システムの崩壊」にまで至ったとしても、決
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