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魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)
【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第2章】StrikerSの補完、および、後日譚。
【第4節】元老レオーネとの、極秘の会話。
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『うってつけ』の人材でしょう」
「では、あと一人は?」
 ラルゴはしばらく考え込んでいる振りをして、たっぷりと()を置いてから、こう答えました。
「レオーネ・フィルス法務長官はどうでしょうか? 一般大衆には今ひとつ知名度の低い人物ですが、こちらも私の古い友人で、提督の肩書きを持った中将です」
「いいだろう。それでは、君たち三人は年度末に引責辞任して、来年度からは〈三元老〉の地位に就くものとする」
「終身制の名誉職だ。せいぜい長生きするが良いぞ」
「はい。ありがとうございます」
 ラルゴは丁重に礼を言って退席しました。
 レオーネとミゼットには「事後承諾」になってしまいますが、彼等は今までも、念話と記憶力だけを頼りに計画を進めて来たのですから、この二人以上の適任者など何処(どこ)にもいません。彼等もきっと、この「延長戦」に同意してくれることでしょう。
 ラルゴは再びリナルドによって薬で眠らされ、その「秘密の場所」を(あと)にしたのでした。
 それが、今からもうほとんど24年も前の出来事です。


「それでは……あなたたちは、あの方々(かたがた)を最初からずっと(あざむ)き続けていたのか?!」
 総代専用の執務室で、イストラは思わず声を(あら)らげました。レオーネが深く静かにうなずいて見せると、ほとんど崩れ落ちるようにして、自分の椅子の上にがっくりと腰を落とします。
「私は……これから、一体どうすれば……」
 イストラは、もはやレオーネと目を合わせようともせず、ただ(ゆか)に視線を落としたまま、独り言のような口調でそう(つぶや)きました。
 すると、レオーネは意外にも慈悲深い口調でこう答えます。
「しかしながら、『私たちが君より幸運に恵まれていた』というのも、また一つの事実だ。私たちは最初から三人で協力できたし、途中からはリナルドも味方になってくれたからね。
 だから、私たちも、君を個人的に糾弾するつもりは無い。ただ、無駄に世間を騒がせたくも無いから、あの御老人たちが今日まで生きていたことは、厳重に秘匿(ひとく)するつもりでいる」

 それを聞くと、イストラはまた不意に(おもて)を上げました。視線が合うのを待って、レオーネはまた静かに言葉を続けます。
「となると、一般に公開できる『君個人の罪』は、『総代という要職にありながら、いわゆる正常性バイアスによって、未曽有(みぞう)の危機に正しく対処することができず、クロノ・ハラオウン提督に対してもあからさまに間違った命令を出した』という程度のものだ。だが、それでもやはり、総代としての責任は取ってもらわねばならん」
「それは……引責辞任だけで(ゆる)していただける、ということですか?」
「私たちは赦すよ。君が君自身を赦せるかどうかは、また別の問題だがね」

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