【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第2章】StrikerSの補完、および、後日譚。
【第3節】ゆりかご事件におけるクロノ提督の動向。
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陣を組みました。各艦とも「敵艦を頂点とする円錐形」の底面の円周上に並んだ形です。
その円錐の「高さ」が充分に低くなり、地上への流れ弾の心配が無くなるまでの間、全艦ともにそれぞれの位置から〈ゆりかご〉の状況を詳しく調べ始めたのですが、ほどなく〈ゆりかご〉の腹の側へと回り込んだ〈テルドロミア〉から、クロノ提督の許にまた「秘密回線」での個人通信がありました。
クロノはやむなく、またそっと遮蔽スクリーンを張ります。
「こんな時に、何だ?」
「クロノ、これを見て」
送られて来たのは、〈ゆりかご〉の艦首下部の超拡大映像でした。何かが〈ゆりかご〉の装甲に突き刺さっているようです。
そして、よく見ると、それは「高度数百キロメートルの低軌道」にある通信衛星か何かに由来するデブリでした。現役の次元航行艦ならば、通常の「反発フィールド」で簡単に弾き飛ばせる程度の「小さなゴミ」です。
リゼルは何やら、もの凄い速さで十本の指を動かしながら、確認を取る口調でこう言いました。
「これって、つまり、〈ゆりかご〉は今、素っ裸ってことよね?」
(だから、何故わざわざ選んでそういう表現を……。)
クロノは思わず溜め息をつきましたが、それでも、肉声に出しては『そういうことになるな』と応えます。
すると、リゼルは不意に真剣な表情で、いつもより少し低い声を出しました。
「だったら、あなたの手を煩わせるまでも無いわ」
リゼルはそう言って指を止め、自分専用の司令官席に「見るからに臨時に」取り付けられた非常用ボタンのカバーを外すと、即座に拳の小指の側を叩きつけるようにしてその大きなボタンを押しました。
クロノの〈クラウディア〉とリゼルの〈テルドロミア〉は全くの同型艦ですが、クロノの席には、もちろん、そんなボタンはついていません。
「ちょっと待て、リゼル! 今、一体何をした?」
「言ったでしょう。『もし物理攻撃が有効なようなら、〈ゆりかご〉に特攻させるつもりで、無人の突撃艦を二隻、連れて来た』って」
(なん……だと……。)
一瞬おいて、クロノは思わず大きな声を上げました。
「ダメだ、リゼル! 今すぐ、その突撃艦を止めろ! この状況なら、〈ゆりかご〉は破壊しなくても、鹵獲できる!」
しかし、リゼルはそれとは対照的に、妙に沈んだ口調でこう答えます。
「ごめんね、クロノ。あの無人艦は、最初から『一度動かしたら、もう誰にも止められない』ような構造になっているのよ」
(ええ……。どうして、そんな……。)
クロノは一瞬おいて、気がつきました。
「まさか……先程、忙しげに指を動かしていたのは、突撃艦のコース設定
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