壱
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ある日。
ある時。
彼はトラックに轢かれそうになっていた子猫を助けようとして、見事に挽き肉にされた。それはもう、THEテンプレとしか言い様のない死に方だった。
(そ、それがなんで……)
死に際に見えると思った走馬灯は全く見ることが出来ず、更には助けた筈の子猫に馬鹿にするような目で見られた。周りには人気もなく、トラックの運転手らしき中年のおっさんはコンクリ塀に突っ込み、脳髄を撒き散らしながら臨終していた。
(なんで……)
猫には馬鹿にされるわ、看取ってくれる人もおらず、まったく、見事に、不幸に彼は死んだ。死んでしまった。享年十七、花の高校二年生。これからの将来が期待される若者である筈の命は呆気なく散ったのである。
(な、んで、……)
そう、散った、散ったのである。散った筈だ。が、彼は奇跡的にも生きていたのだ。自分でもわかるほどにグチャグチャになった彼は生きていた。
ーー生きているのだ。
「……ぅ、ぉぉぉぉぉ!?生きてる!生きてます、生きてましたよぉぉ!俺、生きてるぅぅ!」
きゃっきゃっと幼児の様に走り回る彼は決して社会に見せられない。見せてはいけない。主に見てしまった人の精神衛生上的な意味で。
「はっはー!生きてやがる!ぴんぴんしてらぁっ!ついでにあそこもびn(ry」
割愛。
さて、トラックに跳ねられ、挽き肉にされた筈の彼はようやく落ち着き、現状を確認することにした。
「つーか、なんで生きてんだ?完全に下半身はお肉屋行きましょーね、てきな状態だったのに。そもそも、生きてんの、俺?」
首を傾げるが傾げるだけで答えは降臨してこない。取りあえず身辺確認。
「えーと、うん、シャツボロボロ。ジーパンは……うん、パンツが見えてないだけ良しとするか。んで、周りは……」
首を回し、辺りを見渡すと
木、木、木、木、木、木。
「うん、フツーに森です。本当にありがとうございました。………って、おぃぃぃぃ!?何故に森?!都会のアスファルトどこ行った!?更には病院ですらねぇよここ!?」
今さらの状況に混乱する。確か、猫助けて、トラックに跳ねられ、ご臨終。そうだったはずが、何故か全身服がボロボロ。体にダメージは無いようだが、ここがどこか分からなかった。
「ハイハイ、天ぷら、天ぷら。そんなご都合主義お腹一杯だっつーの」
彼はまがりなりにも高校生をやっていたのだし、オタク文化にも当然手を出している。したがってそういうシチュエーションは容易に思い付くが。
「ないない。死んだと思ったら生きててまさかのそこが異世界。しかも漫画、ラノベ、ゲームの世界なんて言う状況が………ん?」
あれ?おか
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