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レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission5 ムネモシュネ
(5) アスコルド自然工場 中央ドーム下層(分史)
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がった」

 ユティはアルヴィンの項垂れた背中を軽く叩いた。

「その噂が、『ヘリオボーグの先の荒野で髪の長い女みたいな精霊を見た』ってのなんだ」
「髪の長い精霊?」『まさかミラ!?』

 驚くエリーゼとティポとは裏腹に、エルは小首を傾げる。

「ミラ? だれ?」
「私たちと一緒に旅をした方ですよ。ミラ=マクスウェル。その名の通り、元素の精霊マクスウェルその人です」
「もっとも本当にマクスウェルになったのは1年前に断界殻(シェル)が開いてからだけどな」
「……不思議なことに縁があるにも限度がないか?」
「そう言うなって。人生何が起きるか分からんもんさ。おたくもそのクチだろ」

 アルヴィンがルドガーの肩に腕を回した。

 確かにただの青年がいきなり人類の命運を懸けたレースに参加させられるとは、ルドガー自身も思わなかっただろう。

「ミラさんかどうかは置いて、有力情報には違いありません。とにかく一度ヘリオボーグに向かってみるべきでしょう」

 ルドガーもアルヴィンも真剣な面持ちで肯いた。

「先に行っててください。わたしはローエンの治療をしてから合流します」
「二人だけで大丈夫か? まだ警備兵やガードロボがいるんだぞ」
「復調しさえすれば、私とエリーゼさんたちで力を合わせて乗り切ってみせます。ジジイもまだまだ若い者に負けてはおれませんから」
「あのなあ……」

 少女と老人を敵地の真っ只中に残せるほどルドガーは冷徹ではない。だから早めに未練を絶たさねばならない。

「ルドガー。ここで問答しててもしょうがない。二人とも優れた術者。ワタシたちは先に行くべき」
「でも」
「行くべき」
「……分かったよ」

 ルドガーは迷いを振りきるように踵を返した。ゲートへ歩いていくルドガーにエルが、アルヴィンが続く。
 ユティも追った。後ろに残した二人を顧みることはなかった。

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