第百三話 堕ちない幸せその六
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「そんな人だけれど」
「その人とその落語家さんって同じみたいね」
「うん、生きていてもね」
「害にしかならない」
「そんな人かもね、人間ああなったら」
伊東は今度は考える顔で述べた。
「人間に生まれ変われないね」
「死んでも」
「犬や猫ですらなくて」
所謂畜生道である。
「餓鬼にね」
「生まれ変わるの」
「そうなって」
そしてというのだ。
「ずっとね」
「餓鬼道で苦しむのね」
「うん、そうなると思うよ」
「餓鬼ってあれよね」
留奈は顔を顰めさせて言った。
「いつも餓えてるのよね」
「だから餓鬼だよ」
「餓えている鬼だから」
「そしてね」
そのうえでというのだ。
「渇きにもね」
「苦しんでいるのね」
「いつも餓えて渇いているのに」
そうしたことに苦しめられているがというのだ。
「喉が細くてね」
「食べものが通りにくいのね」
「そうした身体の仕組みで」
それでというのだ。
「お腹の中には虫が一杯いて」
「寄生虫ね」
「それも蜂とか百足とかで」
そうした毒のある虫でというのだ。
「いつもお腹の中を噛んだり刺したりして」
「痛いのね」
「それでずっと生きるんだ」
「それかなり嫌よね」
「食べられるものがあっても」
例えそうだとしてもというのだ。
「出したものとか」
「そんなものしかないのね」
「まともなものなんて」
それこそというのだ。
「食べられないから」
「それかなり嫌よね」
「あんまりにも酷い人はね」
「餓鬼になるのね」
「餓鬼道に堕ちて」
そしてというのだ。
「そうなるんだよ」
「そうなのね」
「それでね」
そのうえでとだ、達川はさらに話した。彼は自分が知っている仏教のこの話を留奈に対してさらにしていった。
「今お話してるみたいな人達なんて」
「餓鬼になるしかないのね」
「酷さで言ったら」
達川はさらに言った。
「天理教の教会にいた人の方だね」
「あの人ね、確かにね」
留奈も否定しなかった。
「あんまりにもね」
「酷いよね」
「落語家さんも酷いけれど」
「この人まだ自分で稼いでね」
「自分で生きてるしね」
「家族も養ってたし」
このことも事実だったというのだ。
「まだね」
「ましよね」
「それもかなりね」
こう言うのだった。
「教会にいた人なんて」
「食べさせてもらってばかりだったから」
「養うことなんて」
それこそというのだ。
「したことないっていうか」
「発想すらなかった?」
「だから奥さんが出た時も」
離婚してというのだ。
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