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第四十二話 虚無その十三

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「十年の間だよ」
「生きたままの様にしてくれていましたか」
「君に使って欲しくて。そして」
「昴流君の為にもですね」
「使える様に術をかけていたらしくて」
「北都さんらしいですね、では」
「彼の目は戦いが終われば手術を受けられて」
 その頃にはというのだ。
「そしてだよ」
「また見られますね」
「そうなるよ」
「なら尚更いいです」
 星史郎は安心した様に述べた。
「僕としても」
「うん、けれど君は」
 牙暁はその笑顔の星史郎に言った。
「満足なのかな」
「とても。もう思い残すこともです」
「ないんだ」
「最後の最後に皆さんとお友達にもなれましたし」
「いいんだね」
「昴流君も北都さんも大好きでしたが」 
 星史郎はここでも本音を述べた、嘘吐きと言われた彼だったが牙暁に今は正直に語っていくのだった。
「皆さんもです」
「好きだったんだね」
「一緒にいられてよかったです」 
 こうも言うのだった。
「まことに」
「そう思うなら」
「死ぬことはですね」
「よくなかったよ」
「そう思われてもです」
「君はだね」
「そうするしかです」 
 まさにというのだ。
「なかったです」
「君の運命では」
「そうです」
「運命は決まっていなかったのかな」
「決まっていなかったとしても」
 それでもというのだった。
「僕はこうしていました」
「そうなんだね」
「ですから桜塚護をです」
「終わらせたかったんだね」
「そして昴流君を解放したかったのですよ」
「大好きな相手だからこそ」
「幸せになってもらいたくて」
 そう思うが故にというのだ。
「僕はです」
「敢えて彼を攻撃して」
「死にました、そして」
「ああ言ったんだね」
「もし僕が好きと言えば」
「それでだね」
「桜塚護は受け継がれ」
 好きな、愛している相手を殺してなるそれがというのだ。
「昴流君はそうなっていました」
「そうなるからこそ」
「そしてですね」
 星史郎は言葉を続けた。
「彼は地の龍になっていましたね」
「桜塚護こそが地の龍だからね」
「そうですね、それもです」
「防ぎたかったんだ」
「死んでから気付いたんですよ」
 星史郎の顔から笑顔が消えた、そのうえで牙暁に話した。
「あの人がいますね」
「うん、あの人はね」
「そうなることを望んでいましたね」
「君が死んでね」
「昴流君が桜塚護、天の龍から地の龍になって」
「その数と力が拮抗することがね」
「そこに付け入ることがしやすいので」
 そうなるからだというのだ。
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