第三部 1979年
曙計画の結末
甦る幻影 その3
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ンは、饒舌に語りだした。
「問題は、搭載しているLSIやセンサーではない。
姿勢制御用のスラスターを小型化し、なおも精度を高めれば……」
そういって、口ごもるハイネマン。
口直しに高級老酒「古越龍山」を一気に呷る。
この酒は中国外交部が国賓接待酒指定銘柄として証明書を発行し、大使館で供される品物である。
「引き続いて頼む。
ニューヨークのオフィスでは研究もしやすかろう」
「実用化のめどは、少なくともあと1年」
長官に注がれた老酒は、グラスから溢れんばかりであった。
慎重に口元に運び、のどを鳴らしながら一気に飲んだ。
「いや、2年か」
そういって、ハイネマンは天を仰ぐ。
一瞬、向かい側にいたヘレンカーターの目の色が変わった。
「だが、大統領は新型機の大量生産を指令してくる」
ハイネマンの顔に驚愕の色がありありと浮かぶ。
「そんなのは、無茶だ」
「戦術機開発競争は待ったなしだ。
今日の試験は非公開を主張したが、政府が許さなかった。
戦術機の保有数では、合衆国はソ連に後れを取っている」
米国に対して、軍事力の質の面で劣っていたソ連は、量の面で補う策に出ていた。
ここで、史実のソ連軍に関して振り返ってみたい。
ソ連赤軍の地上兵力は、173個師団183万人。
46個師団45万人を中ソ国境に配置し、ザバイカルには34個師団35万人が展開していた。
航空兵力については,全ソ連の作戦機、8500機。
極東に関して言えば、約4分の1である2060機を展開した。
その内訳は、爆撃機450機、戦闘機1450機、哨戒機160機である。
水上戦力は,ソ連の艦艇2620隻。
ウラジオストックにあるソ連太平洋艦隊では、785隻を保有していた。
「だが合衆国は、エレクトロニクスの点ではソ連をはるかに凌駕している。
ハイネマン君は謙遜しておるが、その点では世界最強だよ」
海軍長官は、少し飲んだだけなのにほんのり赤くなっていた。
いつもは白い顔に怜悧そうな表情を浮かべているのに、今宵は大違いである。
「ソ連には、フランク・ハイネマンがいない。
それがすべてですよ」
新しいシーバスリーガルを持ってきた海軍将校が横から口をはさむ。
夏季白色礼装に身を包んだ東洋系の好青年であった。
「今回の試験で開発競争に、拍車がかかりますな」
とたんにハイネマンの表情が険をおびた。
「なぜ」
「ソ連や日本に刺激を与えるでしょう」
そのとき、猛烈な勢いでハイネマンはテーブルを叩いた。
振動でグラスが揺れ、中に注がれた紹興酒が飛び散る。
「知った風な口をきくな!
BETA戦争での勝利には完璧な防御システムの完成しかないのだ。
その為にはLSI搭載の新型ミ
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