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冥王来訪
第三部 1979年
曙計画の結末
篁家訪問 その1
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真意を聞かせてもらおうか」
篁はマサキの歯に衣を着せぬ言い方に失笑した後、  
「実は、F-4の日本版である、激震のフレーム改造に協力してほしい。
以前貰ったローズ・セラヴィーの関節が特殊だったんでな」
 マサキは、遠慮せずにタバコを吸うことにした。
篁との話し合いだ、女子供もいないだろうし、何の遠慮気兼ねも必要あるまい。
静かにホープの箱を取り出して、火をつける。  
「言っておくが俺は戦術機に関しては、素人だ。
戦術機に使われている電磁伸縮炭素帯(カーボニックアクチュエータ)など信用しておらんからな。
ローズ・セラヴィーなら、内部フレームはゼオライマーと同じような作りになる」
 夕方に来たから、茶菓子の一つも出ないのか。
案外、武家というものは質素な生活をしているのだなと、思った時である。
 奥の方から色無地を着た白人の女がゆっくりと現れた。 
「え……」
思わず、マサキはつぶやいていた。

 紺の色無地姿の女は、年のころは20代後半であろうか。 
化粧はあまりしていないが、肌艶がきれいで人目を引くような端正な顔立ちである。
 きりっとした水色の瞳は深い輝きを放ち、氷のような鋭さを感じさせた。
まるで極寒の海に浮かぶ流氷の様な、瞳であった。
 マサキは直感的にわかった。
これが、天才女技術者のミラ・ブリッジス。
 これならば、篁が夢中になるのも分からないでもない。
思わず、タバコを口から取り落としてしまった。
「木原さんですね。
いつも、主人がお世話になっております。
ミラ・ブリッジスです。」 
 清楚で、繊細……それに笑顔が自然だ。
マサキは目の前のミラを、上から下まで眺める。
感無量の面持ちになりながら、タバコを拾って灰皿に押し付ける。
「ど、どうしたの。大丈夫」
「気にしないでくれ……何でもない」
 肩まで伸びるセミロングの金髪は艶に満ち満ちている。
潤いのある前髪がふんわり額に垂れかかる眺めは、形容しがたいものであった。
 身長は162、3センチ。
着物を着ているせいか、よくわからない。
だが女好きの篁が一目ぼれするくらいだから、恐らく熟れたグラマーな体系なのだろう。

「木原さんって、祐唯(まさただ)榮二(えいじ)の話だと、ずいぶん元気のいい人ってイメージがあったけど違うのかしら」
「え、いや、そんな……」
 この瞬間、マサキは至福を味わった。
それは、数十年ぶりに歓喜の爆発する様な感激を覚えた。
たとえ、それが社交辞令であっても、寛悦の時だった。
吉祥天(きっしょうてん)か、弁財天(べんざいてん)か」
 吉祥天とは、インドの女神であるラクシュミーであり、美と豊穣の神である。
後に仏教に取り入れられ、守護神の一柱となった女神である。
 弁財天は、又の
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