第1話 クルト=ゾルディック
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たものの、依頼主の意向を聞き入れるのは、殺し屋に関わらず、仕事をするにあたっての基本だ。それを考慮すれば、結果的にブラドを生きたまま捕まえるという依頼主の条件はクリアしている。
徐々に冷静になっていく頭でそう考え、クルトはシャーロックの前に立つ。そして、一枚の紙を渡す。
「これで仕事は完了だ。この紙に書いてある口座に五十万ドル入れといて」
クルトはそう言い放つ。
ちなみに五十万ドルという金額は料金としては超格安である。これはクルトが金に対して執着していない事、そして、これからの度において大金は必要ないからと考えたからだ。本来なら億は軽く超える。
とはいっても、十歳の子供に五十万ドルという金額は大金なのだが、如何せん育ちが育ちな為、五十万ドルを大金と思う感覚は失っていた。
「わかったよ。それにしてもそんな安くていいのかい?」
「この十倍払うほうが良かったか?」
「ははは、喜んで五十万ドル払わせて貰うよ」
飄々と、楽しそうに笑うシャーロック。
そんなシャーロックを無視して、クルトは峰理子の前に立つ。
「おいお前、名前は?」
同年代の少女と話す機会など皆無なクルトは、ついついぶっきら棒な口調で言ってしまった。まあ、普段から割とぶっきら棒ではあるのだが。
「み…、峰…理子…リュパン四世…です…」
「ふうん。俺はクルト=ゾルディック。一応ゾルディック家の後継者って事になってる。よろしくな」
そう言いながら手を差し出すクルト。
「え…あ…えと…よろしく…お願いします…」
その手を顔を真っ赤に染めながら握る理子。
そんな理子の様子に気づかず、初めて同年代の子供と知り合えたという喜びに一杯なクルトは、クールな表情を気取っているが、内心は飛び上がりそうな程喜んでいる。
「おい理子」
調子に乗っているクルトは、早速下の名前で理子を呼ぶ。
「またあいつが何かしてきたら俺に言えよ。特別にタダで請け負ってやるから」
その言葉を聞いた理子は、クルトを顔を、瞳をしばらく見つめ、そして、少しだけ嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「うんっ。ありがとうっ」
それは、クルトにとって初めてのお礼だった。
今まで他者から投げかれられた言葉は、「立派な殺し手になれ」、「暗殺者に感情は不要だ」、「助けてくれ」、「お前を呪ってやる」などという言葉だけ。褒められたとしても、それは殺しの技術に関する事だけ。
だから、理子のこのお礼は、クルトの心にダイレクトに響いた。
クルトは頬を微かに染めてそっぽを向く。照れくさくなり、理子の顔を見れなくなったのだ。
そんなクルトを見て、シャーロックは楽しそうに笑っている。
「私ね…、頑張って強くなって…そして…
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