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第四十二話 虚無その九

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「桜塚護、星史郎さんはその相手が何処にいるか」
「わかるんだな」
「だからね」
 それ故にというのだ。
「桜塚護を見た人は」
「印を付けられるからか」
「居場所がそれでわかるから」
 そうなるからだというのだ。
「死ぬと言われているんだ」
「何処にいても逃げられずか」
「殺されるからね」
「そうした事情からか」
「そうなんだ」
 こう神威に話した。
「それで星史郎さんは」
「昴流さんを何時でもか」
「殺せた筈だよ」
「昴流さんの前に来てか」
「その筈だったけれどあの人はそうしなかった」
 これまでずっと、というのだ。
「今日会うまでね」
「一度もか」
「お互いが天の龍地の龍とわかっても」
 それでもというのだ。
「全くね」
「そんなことはなかったか」
「そうだったんだ」
 これがというのだ。
「今日までね」
「それが何故かはわかっていたか」
「僕はあの人にとって殺す価値もない」
「そんな人間と思っていたか」
「そうだと思っていたよ、けれど」
「どうも違ったな」
「そうだね、実はね」
 星史郎、彼はというのだ。
「あの人は僕を殺したくなかった」
「そうだな」
「そしてね」
 昴流はさらに話した。
「あの人は僕も姉さんも大切に想っていたんだ」
「この人か」
 神威は部屋にある写真を見た、三人映っていてそこには少年時代の昴流と眼鏡をかけた星史郎とその頃の彼と同じ年頃の彼によく似た少女がいた。
「確か北都さんだったか」
「そう、そうその姉さんもね」
「大事に想っていてか」
「そしてね」
 そのうえでというのだ。
「あの人は姉さんに殺されて」
「大切な人を殺すよりか」
「そう思って」
 そしてというのだ。
「一旦はわざと殺されるつもりだったけれど姉さんが」
「実際にはだな」
「殺されて」
「自分が桜塚護になることを拒んだな」
「そしてね」
「あの男は桜塚護のままでいてか」
「今までだよ」
 ずっと、というのだ。
「僕の前に出なくて最後に言ったよ」
「何とだ」
「僕に好きな人はいないって」
 星史郎の死に間際の言葉を神威に話した。
「そしてね」
「死んだか」
「桜塚護は自分が一番好きな、愛する人に殺されて」
「その殺した者が次の桜塚護になるか」
「代々桜塚家でそうしてきたけれど」
 それがというのだ。
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