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第四十二話 虚無その六

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「悲しい、辛い気持ちははじめてです」
「あの」
 ??がここで封真に言った。
「封真さん、今」
「どうした」
「泣いています」
「そう言うお前もな」
 見れば二人共涙を流していた。
「泣いている」
「僕が、ですか」
「そうだ、悲しいな」
「これが悲しいという気持ちですか」
「そうだ」
 その通りだと答えた。
「今の俺達の感情がな」
「不思議ね」
 颯姫も言ってきた、見れば彼女もだった。
「悲しいと思ったこともなくて」
「今の様にですか」
「泣いたことなんてなかったわ」
 こう遊人に答えた。
「一度も。けれど」
「それでもですね」
「今は悲しくて」
 そしてというのだ。
「涙が自然に」
「そうですね、僕も泣いていないですが」
 遊人は確かにそうだった、だが。
「この通りです」
「悲しいのね」
「はい」
 颯姫に答えた。
「心から」
「全くだな、友達だったんだ」
 草薙も言って来た、その顔で。
「死んで悲しい筈はないさ、ただな」
「それでもですか」
「星史郎さんは自分から死にに行ったんだろ」
 封真にこのことを話した。
「だったらな」
「それならですね」
「相手を怨むつもりにはなれないな」 
 こう言うのだった。
「それに相手の人は」
「はい、お姉さんをです」
「星史郎さんに殺されてたな」
「そうでした」
「そうだよな、だったらな」
「お互い様ですか」
「尚更怨む気にはなれないな」
 そうだというのだった。
「とても」
「そうですね。それに星史郎さんは相手を攻撃すれば」
「自分が死ぬことをわかっていてな」
「そうしました」
 攻撃を出したというのだ。
「ですから」
「自殺みたいなものだな」
「そうですね」
 ??もそれはと答えた。
「僕も相手の人を怨めません」
「そうです、怨んでも何もなりません」
 遊人も言ってきた。
「ですから」
「相手の天の龍を怨まず」
「今は星史郎さんを弔いましょう」
「そうすべきですね」
「連れて帰ったうえで」
 今はもの言わぬ身となった星史郎を見て話した。
「そうしましょう」
「ええ、では戻りましょう」
 颯姫は涙を拭ってから応えた。
「ここにいても何にもならないわ」
「そうだな、まずは戻ろう」
 封真は颯姫のその言葉に応えた。
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