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第四十二話 虚無その二

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「今こうして」
「そうです、この時が来ましたね」
「でははじめますか」
「その前に少しいいでしょうか」
 星史郎は煙草を出した、そしてだった。
 それを口に咥えた、すると。
 昴流がライターを差し出し火を点けた、そのうえで自分も煙草を吸いはじめた。そうして言うのだった。
「僕もです」
「煙草を吸われる様になりましたか」
「悪いものじゃないですね」
「いえ、身体には悪いですよ」
 星史郎は昴流の今の言葉にはこう返した。
「やはり」
「それはそうですが」
「それでもですか」
「いい気分転換になるので」
「確かに。ではお互いに」
「一服し終えたら」
「その時は」
 二人は吸いながら話した、そして。
 同時に吸い終えた、吸い殻はそれぞれの術で火ごと消し。
 まずは星史郎が仕掛けた、桜吹雪を出し。
 昴流の無数の桜の枝を槍の様に出して上下左右から攻撃させた、昴流は宙を跳んでその攻撃をかわし着地してから言った。
「桜を使わずとも僕の心は」
「既にですか」
「桜に囚われています」
「そうですね、では」
「小細工はなしでいきましょう」
 再び星史郎の前に来て告げた。
「お互いに」
「渾身の一撃を繰り出して」
「終わらせましょう」
「そうですね、それでは」
 星史郎は澄んだ笑みを浮かべた、そして。
 昴流の前にすっと出た、昴流はそこで自身の攻撃を出そうとした。しかし。
「!?」
「終わり、ですね」
 昴流自身の攻撃が貫く前にだった、星史郎は貫かれていた。彼の攻撃がだった。
 昴流の腕が星史郎の胸を貫いていた、彼は昴流の身体に倒れ込んだ姿勢で呟いた。
「全てが」
「星史郎さんこれは・・・・・・」
「簡単なことですよ」
 星史郎は話した、あの時のことを。
 北都は星史郎の腕の中にいた、彼に貫かれた胸から赤い血が流れ白い陰陽師の服を紅に染めていく。やがて地面も。
 桜の花びら達が散る中でだ、北都は桜の木の下で星史郎に言っていた。
「星ちゃんに術をかけるから」
「敵にそんなことを言ってどうするんですか?」
 星史郎は北都を抱いたまま彼女に問うた。
「意味はないですよ」
「術を解くわよね」
「普通はそうしますよ」
「星ちゃんはそうしないから」
 わかっている、そうした返事だった。
「だからね」
「僕に術をかけるのですか」
「今私が殺した攻撃を昴流ちゃんにすれば」
 その時はというのだ。
「逆に星ちゃんがね」
「その攻撃で死ぬのですね」
「攻撃がそのまま跳ね返ってね」
「そして僕は昴流君を殺さない」
「殺せないよね」
「ですから術は解けますよ」
「星ちゃんの力ならね。けれどね」
 北都は次第に冷たくなっていくことを感じながら言った。
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