暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第177話:雪解けの輝き
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 上から響く声に透が顔を上げると、通り過ぎていくヘリから飛び降りたのか既にギアを纏ったクリスが彼に向けて落下してきていた。彼の事を真っ直ぐ見てくるクリスに、透は体の痛みも忘れて立ち上がると両手を広げて彼女を受け止めた。

 お互い抱きしめ合う様にして透に受け止められたクリスは、地面に下ろされると開口一番彼に対して頭を下げた。

「透、ゴメンッ! アタシ、今までずっと忘れてた。透が昔アタシの事を助けようとして怒ってくれた事も、その時にアタシが逃げて透を傷付けちまったことも……。透を今見たいにしちまったのは、アタシなんだって事を忘れて、アタシは……。本当に、ゴメンッ!」

 独りよがり同然に勝手に透の事を全部理解した気になって、それが裏切られたと勝手に彼から距離を取り彼を苦しめてしまったとクリスは後悔と共に彼に謝った。

 それに対し、透も彼女に対して頭を下げた。

――悪いのは僕の方だよ。僕が、クリスの事を考えずに勝手に1人で前に立って……

――クリスには傷付いてほしくなくて、咎を背負ってほしくないから、あの時は君の事を叩いちゃった……

――本当にゴメン。僕は、君に取り返しのつかない事をしちゃった……

 声を失った透の謝罪には言葉はない。何時もの感覚で言葉も無く心の中で彼女に対して語り掛け、これではいけないと思い直して意志を交わす為の魔法を使おうとした。が、クリスはそんな彼を止めた。そんなもの、必要無いから。

「いいんだ、透。分かるよ、透の言葉。透も、アタシの事を想ってくれてたんだって事は、伝わってくる。だから、これだけ言わせてくれ」

 そう言ってクリスは仮面で覆われた透の顔を両手で包み、仮面越しに彼の目を見据えながら言葉を紡いだ。

「アタシは透の全部を受け止める。透が感じる辛い事も、何もかもを一緒に背負う。だから1人で全部を背負わないでくれ。アタシは透が1人で傷付くのを見てる方が辛い。だから……アタシと、一緒に歩いてくれ……!」

 クリスの言葉に、透は心が現れるような思いだった。ソーニャの言う通り、クリスは透が1人傷付き全てを背負っていく姿を見る事が辛かったのだ。その気持ちを今彼も漸く理解した。今までは漠然とした感覚でしかなかったが、今彼は本当の意味でクリスと心が繋がったのを感じた。それが嬉しくて胸が熱くなり、透は仮面の奥で涙を流しながら彼女の事を抱きしめた。仮面に覆われている為今の透の表情は誰にも分からない筈だが、クリスの目には涙を流す透の姿が手に取るように分かった。

 痛い位の力で抱きしめてくる透を、クリスは優しく包む様に抱きしめ返し背中をゆっくりと撫でる。漸く彼が自分の弱さを見せてくれた事に、クリスも肩の荷が下りたような気持になった。

「一緒に背負うよ、透。それで、パパとママの夢
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