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第四十一話 好意その十六

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「しかしじゃ」
「それでもですか」
「わらわもまた動いていく」
「この世界、人間を滅ぼす為に」
「この世の全てを滅ぼすのじゃ」
 こう言うのだった。
「わらわを何もなく生まれさせ夢見として無理強いさせてきた憎きこの世界を」
「そしてこの世界にいる人間達を」
「全て滅ぼす。天の龍を滅ぼせば」 
 その後はというのだ。
「人間をその様にし」
「残った地の龍も他の生きもの達も」
「地表と海の全ての生きものを滅ぼし」
 そしてというのだ。
「わらわは高笑いしようぞ」
「あくまでそう思い」
「動く。地の龍の神威の心は変えられなかったが」
 それでもというのだ。
「まだじゃ」
「動き続けますか」
「そなたが幾ら邪魔立てしようともな」 
 それでもというのだ。
「わらわはじゃ」
「動いていきますか」
「そうしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「きっとそうする。安心せよ」
「地表と海の全ての生きものが滅んでも」
「時が経てばじゃ」
「また命が地球に満ちる」
「そうなる。地球の生涯から見れば些細なことじゃ」 
 邪な笑みを浮かべて言うのだった、一点の曇りもない丁の顔が一瞬でそうなるのは異様ですらあったが今それを見ている者はいない。
「かつては恐竜もじゃ」
「滅び」
「そしてまた命が満ちておる」
「それと同じで人間もまた」
「滅んでもじゃ、他の命もな」
「長い時間を経て満ちる」
「どうということはなかろう」
「いえ」
 丁はその言葉を否定した、鏡合わせの自分に言う様に。
「そこにある命それぞれに生があり」
「価値があるか」
「人間もまた」
「この世界を穢す存在であろう」
「穢しもし清めもします」
 丁はこう言って否定した。
「人間は」
「善と悪双方を備えておるか」
「そうした存在です」
「だから一方的に断罪してか」
「滅ぼしてはなりません。ましてわらわ達もです」
「人間であるな」
「そうであるなら」
 尚更というのだった。
「滅ぼすなぞです」
「ないか」
「そうです」 
 澄んだ声で否定していくのだった。
「何があろうとも」
「そう考えるからか」
「わらわはこれからもです」
「わらわを止めるか」
「そうしていきます」
「それであの二人もか」
「既に皇昴流は戦場に向かいました」
 彼のことを言うのだった。
「きっとです」
「わらわの思い通りにはならぬか」
「人間は愚かで過ちを犯し迷いもします」
 人間のそうしたことも話した。
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