敢闘編
第七十三話 蠢動
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多分、ウィンチェスターはネグロポンティ氏が嫌いなのだろう。
「君は私を馬鹿にしているのか!方針については君に聞けと本部長が言ったのだ!どうなっとるんだね本部長!」
「申し訳ありません。少将、同盟軍の採る今後の方針について、貴官の思う所を述べてみたまえ」
「まさか、小官の意見が採用されるのですか?」
ネグロポンティ氏は沸点が余程低い人物の様だ。沸点が低くなる理由が判らんでもないが…。
「それはまだ分からん、だが来年度の予算折衝に必要な事なのだ!」
「とすると…国防委員会はいち少将の私案というあやふやな物で来年度の予算折衝を行おうとしているのですか」
「そんな事は言っていない!」
「ですが、そう仰っているのと同じではありませんか。小官は軍の最高責任者ではありませんし、例え本部長が小官に聞けと申されたとしても、軍の進退に関わる様な事をおいそれと申し上げる訳にはいきません。ここで小官が何か発言してそれが議題に挙がる。それが軍の公式見解ではないとなったら、誰が言ったのだ、という話になります。小官は槍玉にはあげられたくありません」
国防委員というのは厄介だ。評議員には変わり無いから自分の点数を上げる為に色んな事を言ってくる。ネグロポンティ氏も委員会での点数稼ぎの為にここに来たのだろう。予算に関わる話など、いち国防委員に話す物では無いし、本当に予算に関わる話ならこうやって突然来る事など有り得ない。
「私案を示せというのが本部長の命でもかね?」
「はい」
「…国防委員長に報告するが、構わないかね?」
「ご自由に」
ご自由に、と言われてはネグロポンティ氏は何も言い返せないだろう。勝負あったな。
「委員、少将には本職からよくいい聞かせておきますので、今日の所はお引き取りを。いやはや、強情で本職も困っておりまして」
「…了解した。また日を改めるが、この件は国防委員長に報告するからな!」
肩を震わせながらネグロポンティ氏は公室を出ていった。
本当に報告するとしたら、氏も大した人物ではない。
「本部長」
「何かね?」
「面倒を小官に押し付けるのは止めて下さい。小官は暇ではありません」
「艦隊の編成は貴官がやっている訳ではないのだろう?」
「それはそうですが」
「しかし見事な物だな、私の意を汲んで見事に追い返した」
「言った通りですよ。小官の発言が軍の来年度予算に影響するなんて事になったらとんでもない事態です。私的ルートで予算に口出した、なんて思われたら軍も小官自身も迷惑極まりない」
「そうだな。軍部の中にも国防委員や懇意の評議員に私案を持ち込む輩がいる。結果情報漏洩が生起して軍部は信頼を失う。利敵行為だよ」
国の為、と言いながらやっている事は点数稼ぎに過ぎない。そういう連中を厄介に思うが故に、追い払おうとして喋ってし
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