敢闘編
第七十三話 蠢動
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ますが…五日前から所在不明となっています」
「所在不明?」
「はい。接触して以来、フェルナー大尉と彼の部下が交替で監視していたのですが…」
「監視の目をかいくぐって姿を消したと?フェルナー大尉は監視対象を見逃す様な間抜けには見えないが…とすればその部下も間抜けではない筈だ。違うか?」
「私もそう思いますが…最悪の場合、大尉の独断、という事も有り得ます」
「…有り得ない事ではないな。有っては欲しくないものだが」
「大尉も困っていました」
「困っていた?自分が疑われる事が?グレーザーが消えた事が?どちらにせよこれで詮索は不可能だ。フレーゲルやコルプトに直接聞く訳にはいかないのだから」
臭い物には蓋、とは日常でも当たり前の話で、早くどうにかしなくてはならない事の一つだ。早ければ早い程良い。フレーゲルの立場であれば自分達の身の保全の為、フェルナー大尉…ブラウンシュヴァイク公の立場であっても同じ事だ。世の中、納得できなくても受け入れなくてはならない事が多い。権力者達が関わっているとなれば尚更だろう。
部屋の中に再び静寂が訪れようとする中で、コーヒーカップの音だけが静寂に対抗している。それに耐えかねた訳ではないだろうがキルヒアイスが再び口を開いた。
「一つ気にかかる事があります。グレーザーはフェザーンと繋がっていました。侯爵夫人付の宮廷医になれたのもフェザーンの手回しがあった様です」
「フェザーンだと……」
宇宙暦793年8月15日14:00
バーラト星系、ハイネセン、ハイネセンポリス、自由惑星同盟、自由惑星同盟軍、統合作戦本部ビル、統合作戦本部長公室
シドニー・シトレ
「それで、貴官はこの先どうなると考えているのだ」
「この先、とはどういう意味でしょうか」
目の前にいるこの男…ウィンチェスター少将という男はたまにとぼける所があるのが悪い癖だ。心底とぼけている様にも、わざとやっているかの様にも見えるのが腹立たしくもある。慣れている私ですらそうなのだから、そうでない者にとっては尚更腹立たしい事だろう。
「どういう意味ではないだろう、君!上司が質問しているのだからちゃんと答えんか!」
特に、私の目の前にいるもう一人の人物、ネグロポンティ氏にとっては、馬鹿にされている様に感じているに違いない。
「この先というのが小官の今後という事なのか、同盟の今後という事なのか、帝国の今後という事なのか…主旨が曖昧で判別しかねる部分がありまして」
「何を言っとるんだ君は!本部長や国防委員の私が聞いておるんだから同盟軍の採る今後の戦略に決まっておるだろうが!」
「はあ…そういう事でしたら政府の決定事項に軍は従うのみであります。軍が勝手に戦略方針を決める事は出来ませんし、いち少将でしかない小官が憶測で勝手に語る事は出来ません」
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