敢闘編
第七十三話 蠢動
[4/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
意趣返しなら、と暗に認めたに違いない。だがそれも収拾出来る範囲に留めろとも示唆した筈で、まさかベーネミュンデ侯爵夫人まで巻き込んでいる事までは知らなかっただろう。だが事態は思わぬ方向に行ってしまった…。
「…はい。知っていた様です。どの様に実行するかまではご存知なかった様ですが」
公は多分激怒しただろう。想像もしたくないがもし成功していたならばどうなったか…確かに姉さんは後宮から追い出されただろう。だがそうなればベーネミュンデ侯爵夫人がここぞとばかりに囃し立てるのは目に見えている。だが姉さんが後宮から居なくなっても皇帝の寵は侯爵夫人に戻るとは限らないのだ。となると侯爵夫人は益々騒ぐ。夫人を利用した企みも表に出るかもしれない。となれば当然侯爵夫人も後宮を追い出されるだろう。
皇帝は寵姫を二人も失なった上に妾の管理も出来ぬお方と陰口を叩かれ権威は失墜だろうし、それに糸を引いているのは皇帝の外戚の片方とその一門…。リヒテンラーデ侯やリッテンハイム侯がその状況を黙って見ている訳はない。皇帝が望まなくともブラウンシュヴァイク公も何らかの処罰を受けるだろう。俺や姉さんへの意趣返しどころの話ではない、全く何も得る物がない上に新たな宮廷闘争の始まりだ。
いくら自分の甥であっても自分を危険にさらした者を公が放っておく筈もない。ブラウンシュヴァイク一門では内部粛清が始まるかもしれない。そしてまた新たな混乱の種が生まれる…。とんでもない話だ。
キルヒアイスはどんな気持ちで公の言葉を聞いたのだろう。俺なら耐えられただろうか…。事情を知りながら素知らぬ顔をするブラウンシュヴァイク公…詮索するなと言った公の気持ちも分かるが、これではまるで喜劇ではないか。だが喜劇なら人の命は危険に晒される事はない。出来の悪い喜劇……。
「キルヒアイス」
「はい」
「力が欲しいな、何者にも負けない力が。そうは思わないか」
「ラインハルト様、ここでは」
「構うものか…初代皇帝ルドルフは最初から皇帝ではなかった。貴族ですらなく、銀河連邦のいち少将だった…奴は実力で成り上がった。ルドルフに出来た事が俺には出来ないと思うか?…ふん、独り言だ。世辞も追従も要らないぞ」
「…では、当面の目標を決めなくてはなりませんね」
「ふん、とりあえずは艦隊司令官から宇宙艦隊司令長官だな……で、公の言った処罰というのは公式な物なのか」
「それについては何とも…」
「皇帝の寵姫を害しようとしたのだからな、厳しく罰してもらわねばならん。身内の立場としてはこの手で殺してやりたいくらいだ」
「ラインハルト様」
「これくらいはいいだろう…だがグレーザーはどうなるのだ?言わば奴は犠牲者だろう。そして訴え出た張本人だ。情けをかける訳ではないが、奴も何か罰を受けるのか」
「譴責の上解雇、という形になり
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ