敢闘編
第七十三話 蠢動
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のではないか、と…」
「陰謀を弄ぶ故の恐怖か…もしそうなら陰謀を知った者から密告すると脅迫されるか、逆にその者に陰謀を利用されるか、だ。フレーゲル達は後者だと思ったのだろう」
「はい。テロの犯人は状況からいってクロプシュトック侯で間違いありませんが、ブラウンシュヴァイク公主催の園遊会で、しかも皇帝の行幸を得ている園遊会を欠席するとなると、大貴族にとっては余程の事です。あの時点では理由をつけて欠席した者達は必ず疑われる」
「確かにあの場にはアイツ等は居なかった。姉さんだけでなく、俺やお前まで居るのだからな、顔も見たくないとでも思ったのだろうよ」
「ハハ、そうかもしれませんね…ですが意趣返しまでは大目にみても、結果皇帝に被害が及ぶ恐れがあったとなれば話は変わってきます。軍がクロプシュトック侯討伐に向かったものの、それとは別に公の直命でフェルナー大尉と私が動いているのを知った黒幕達は時期的に考えて、私達が捜査しているのはテロの件だと思ったのです。彼等はこの時点では手紙の存在を知りませんから、そう思うのも当然です。謀議が漏れているかもと怯えていた彼等は、テロの罪まで着せられては敵わないと密かに公に泣きついた」
「ふむ…しかしグレーザーは黒幕達の存在を知っていたのか?」
「彼等が出入りしていたのは知っていたと言っていました。そして彼自身は関与していないにも関わらずコルプト子爵から密告を疑われる様になった…グレーザーとしては全て侯爵夫人の妄言と思っていた訳ですから、怯えるのも当然です。この事が決め手となって手紙を書いたと言っていました」
「実行犯の候補になった上に密告を疑われる…次は切られるのと考えるのは、健全な頭の持主なら容易に想像出来る事だ。フレーゲル達とグレーザー…それぞれが個別に怯えた結果、姉さんは無事だったという事か」
姉上の無事は素直に喜ばしい事だが、何とも情けない連中だ。自分勝手に他人を妬んで陥れようとした上に、都合が悪くなるとそれから逃げようとする…度しがたいにも程があるというものだ。だが…。
「おおよその事は分かった。だが一つ気にかかる事がある」
「何でしょうか?」
「ブラウンシュヴァイク公はこの事を…フレーゲル達の企みを元から知っていたのではないか?」
俺の問いにキルヒアイスは目を静かに閉じた。意趣返しは大目にみても、というキルヒアイスの言葉に違和感を感じたのだ。公の黙認があればこそフレーゲル達は泣きつく事が出来たのだ。多分公にはフレーゲル達の気持ちも分かるのだろう。成り上がり者を蹴落とす。我々を庇護下に置いた事は公にとってはヒルデスハイム伯からの希望や政略面からの思惑からだろうが、それを一門全てが納得しているとは限らない。ましてやフレーゲルは以前から俺の事を『金髪の嬬子』呼ばわりしていた。ガス抜きの為と思ったのだろう、
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