【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第1章】無印とA'sの補完、および、後日譚。
【第10節】キャラ設定1: ニドルス・ラッカード。(後編)
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うに記憶を消去できる訳ではないんだけど……あの子のためにも、これからはもう、時おり思い出しては悲しみをそっと抱きしめるだけにしておくわ。その方が、あの子のためになると信じるから」
ミゼット・ヴェローネは毅然としてそう述べましたが、それでも、その口調はさすがに少し寂しげなものでした。
ニドルスは、思わずやや前のめりになり、何かを言おうとして口を開きましたが、実際には何も言葉が出て来ません。
一拍おいて、ニドルスは言葉を諦め、また口を閉ざし、姿勢を元に戻してしまいました。
ニドルスのそんな煩悶と葛藤の所作を見た上で、それでも、ミゼット・ヴェローネはこう言葉を続けます。
「だからね。私はあなたにも……あの子のコトは、もう忘れてあげてほしいの」
「本当に……そうした方が、良いんでしょうか?」
ニドルスは満面に悲しみを湛えていましたが、ミゼット・ヴェローネはそれ以上に、悲しみを深く静かに心の奥に刻み込んだような、すでに「覚悟」の決まった表情をしていました。
「ええ。その方がきっとあの子も『次の転生』に向けて前向きになれるだろうと思うわ。だから、あなたも、これからはもう『あなた自身の人生』を歩んで。
さんざんデバイスや使い魔など渡しておいて今さらこんなことを言うのは、我ながら身勝手な話だとも思うけど……これからはもう、あなたが『あなた自身として』前向きに生きて幸せになってくれた方が、あの子もきっと『向こう側』で満足してくれるだろうと思うの」
ニドルスは、元々あまり宗教的な人間ではありません。正直なところ、「死んだ本人の将来」とか、「次の転生」などといったコトは、今まで一度も真面目に考えたことがありませんでした。
しかし、「実の母」であるミゼット・ヴェローネ自身が覚悟を決めてそう言っているからには、本来は「赤の他人」でしかない自分がここでディオーナに関して何かを言い立てるのは、ただの我儘でしかないのでしょう。
「解りました。今後は、仰るとおりにします」
ニドルスは決然とそう応え、またしばらく世間話などをしてから、ミゼット提督のオフィスを後にしたのでした。
その夜、ニドルスはジェルディスともその件で話し合いましたが、その使い魔はミゼット・ヴェローネの言葉を伝え聞くと、深くうなずき、自分の主人に向かってこう語りました。
「私も提督の言うとおりだと思います。……あなたの気持ちもよく解りますが、このままあなたが立ち止まり続けていたのでは、『私やハルヴェリオスは、あなたの心を過去に縛り付ける「呪いのアイテム」も同然だ』という話になってしまいます。
私もハルヴェリオスも、そんな評価は望んでいません。それに……私自身は、もう彼
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