【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第1章】無印とA'sの補完、および、後日譚。
【第10節】キャラ設定1: ニドルス・ラッカード。(後編)
[5/14]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
は元気になり、息子のクライドも今年で5歳になったので、あとは妹が結婚して幸福な家庭を築き、息子が無事に成長して一人前になってくれれば、自分にはもうそれ以上は何も望むことなど無い、ということ。
ニドルスには『自分は今、遠回しに彼女との結婚を打診されているのだ』ということも解りましたし、さらには『それが、自分にとっては願っても無いほどの良縁なのだ』ということも理解できましたが、そうした理解にもかかわらず、彼の態度は今ひとつ煮え切らないものでした。
それでも、マリッサの側からは大変に気に入られたようで、その後は、休日の度に、ニドルスはデートに誘われるようになります。
しかし、年末年始に幾度かデートはしてみたものの、ニドルスはずっと『本当に俺だけがこんなにも幸せになってしまって良いのだろうか』という気持ちを拭い去ることができませんでした。
ニドルスは今でも〈ハルヴェリオス〉やジェルディスを見る度に、ふと「最初の友人」のことを思い出します。あの日の悲しみが、まるで昨日のことのように思い出されます。
そして、わずか12歳で「約束されていたはずの人生」を唐突に断ち切られてしまったディオーナのことを思うと、ニドルスはどうしても、「自分の目の前に、思いがけず差し出された幸運」を素直に受け取ることができなかったのです。
しかし、翌32年の1月中旬、ニドルスはまた久しぶりに「ディオーナの母親」から呼び出されました。管理局の「ミゼット提督」からではなく、あくまでも「ヴェローネおばさん」からの呼び出しです。
ただし、彼女はすでにミッド地上には土地や家屋を所有していなかったので、場所は〈本局〉における「ミゼット提督のオフィス」となりました。
ニドルスは全く約束どおりの時間にそこを訪れ、提督の秘書に奥の間へ通されると、まずは他人行儀な口調でミゼット・ヴェローネに丁重な挨拶をします。
「長らく御無沙汰しておりました」
「いいのよ、ニドルス君。そんなにかしこまらないで。私も今日は休暇なんだし、第三者に聞かれたくない話をするのに、他に良い場所を思いつかなかったから、ここへ呼んだだけで」
私服姿のミゼット・ヴェローネ・クローベル(53歳)はそう言って、「もしも娘が生きていたら自分の義理の息子になっていたかも知れない若者」を席に座らせました。
自分は向かいの席に座り、手際よく二人に茶を出した秘書を『しばらくプライベートな話をするから』と言って、そのまま控えの間に退がらせます。
そして、作法どおりに互いに少し茶を飲んでから、ミゼット・ヴェローネはこう言って話を始めました。
「二人きりで『仕事抜きの話』をするのは、もう随分と久しぶりね」
「そうですね。……も
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ