暁 〜小説投稿サイト〜
魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)
【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第1章】無印とA'sの補完、および、後日譚。
【第9節】キャラ設定1: ニドルス・ラッカード。(中編)
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ィスも、ずっとこの家の中だけで育てて来た子だから、今さら他の家に移しても、その家には馴染めないんじゃないかと思って……私もこの家屋(かおく)に関することは、ずっと先送りにして来たの」

 自分のことが話題にされたと解るのでしょうか。
 ふとジェルディスがのそのそとやって来て、ソファーの上に上がろうとしましたが、ただ背伸びをするばかりで、もう昔のように跳び上がることもできないようです。
 ミゼット・ヴェローネは、実に悲しげな(おも)持ちで、体の弱って来た白猫を優しく自分の膝の上へと抱き上げました。
「もしかして……ジェルディスはもうどこか体が悪いんですか?」
「この子は元々、生まれてすぐに死にかけていた子だから。昔から、良く言えば『とても大人しい子』で、悪く言えば『あまり元気の無い子』だったわ。だから、怖くて子供を産ませることもできなかったし……それ以前に、発情期のようなものも特に無かったの。
 それで……私は管理局の将軍として〈本局〉(づと)めが忙しくなって、もうあまりこの家に帰って来ることもできなくなっていたから……この三年あまりの間、ずっと、この子の世話と家屋の維持管理のためだけに、実家から紹介された住み込みの使用人を一人、この家に置いていたの。
 でも、先日、その使用人から『どうも猫の調子が良くなさそうだ』と報告を受けて、私も慌てて獣医に()てもらったんだけど……この子はまだ八歳なのに、どうやら、もう今度の冬は越せそうにないらしいのよ」

 ミゼット・ヴェローネは、滔々(とうとう)と語り続けました。
「これは、もちろん、私の身勝手な感傷なんだけど……せっかく猫に生まれて来たのに、この家の中に閉じ込められたまま、こんな『狭い世界』しか知らずに死んでいくのは、何だかとても可哀そうなことのような気がして来たの。
 それで、最初は『体さえ丈夫なら、いくらでも外に連れて行ってあげられたのに』と思って……次には『いっそのこと、私の使い魔にしてしまえば良いんじゃないのか』とも思ったんだけど……よく考えたら、役目が私の秘書では、ほとんど将軍用のオフィスに(こも)りっぱなしになるから、広い世界を見せてあげることには、今ひとつ結びつかないのよ。
 それでも、このまま放っておいたら、この子はもう長くはないわ。……だからね、ニドルス君。できれば、この子をあなたの使い魔に、執務官の補佐としていろいろな世界へ行ける子にしてあげてほしいの。……私のお願い、聞いてくれるかしら?」

 これは、本来なら、決して「軽々しく引き受けて良い話」ではありません。「人造」とは言え、使い魔は(かり)にも「生命体」であり、『何かの命を預かる』という行為には、必然的にそれ相応の責任が(ともな)うからです。
 古来、『使い魔は最初から契約で(しば)り、契約
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