【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第1章】無印とA'sの補完、および、後日譚。
【第9節】キャラ設定1: ニドルス・ラッカード。(中編)
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。ここは、録音も録画も監視もされてねえし、よほどの大声でも上げねえ限り、外には何も聞こえねえ。その点は確認済みだ」
ヴェナドゥスはそう言って、へらへらと笑ってみせます。
ニドルスが絶句したまま、しばらく無言でいると、ヴェナドゥスは心底詰まらなさそうに舌を打ちました。
「何、黙ってんだ、この野郎。この俺に何か言いてえことは無えのかよ?」
「……なぜ殺した?」
ニドルスがやっとのことで、その一言を吐き出すと、ヴェナドゥスは一瞬、大きく目を見開き、そして、アッハッハァと大笑いを始めます。
「ホントにそんなコトも解らねえのか。だから、お前はバカだって言うんだよ」
「質問に答えろ!」
どうしようもない苛立ちと嫌悪感が腹の底から沸き上がり、次第にニドルスの意識と口調を変えて行きました。その変化を感じ取ったのか、ヴェナドゥスもバカ笑いを止めて、真顔で弟と向き合います。
「ずっと前から殺したかったさ。あんな毒親は、お前だって殺したかっただろう? お前の代わりに手を汚してやったんだぜ。少しはこの兄に感謝したらどうだ?」
「あの二人が毒親だったのは確かだけど、僕は殺したいとまでは思ってなかったよ。せいぜい早く縁を切りたいと思っていただけだ」
自分の兄がこんな人間だということに、どうして今まで気がつかずにいたのだろう。ニドルスは思いました。ただ単に兄の演技が上手かっただけなのか。あるいは、ただ自分がいろいろなことから目を背けて生きて来ただけなのか、と。
実のところ、ニドルスは今までの人生の中で、これほど真面目に兄と向き合ったことは、一度もありませんでした。
「お前はいいよな。一言『縁を切りたい』と言えば、喜んでそうしてもらえる立場なんだから」
ヴェナドゥスはいよいよ心の闇をぶちまけ始めます。
「俺は物心ついた時にはもう、期待という名の鎖で『がんじがらめ』になっていた。生まれてふと気がついたら、不平や不満など一言も言えねえ状況に、いきなり追い込まれていたんだよ」
「言いたいことがあるなら、言えば良かったじゃないか! 何も殺さなくても!」
「それは縛られていなかった人間の言い草だ」
ヴェナドゥスは、弟の懸命の主張をもバッサリと切って捨てました。
「ガキがオトナにケンカを売っても勝てねえよ。しかも、向こうはルール無用だ。二人がかりで、あの手この手を繰り出し、口では『お前のためだから』とか言いながら、俺の人生を、俺の自由を、全力で潰しに来やがる。
俺はガキの頃、面と向かってアイツらに言われたことがあるよ。今でも一言一句、正確に覚えている。アイツらは五歳児に向かって『自分たちがわざわざお前のためにレールを敷いてやっているんだから、お前は何も考えず、ただ自
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