【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第1章】無印とA'sの補完、および、後日譚。
【第8節】キャラ設定1: ニドルス・ラッカード。(前編)
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母親に対しても名前で呼びかけられる程度には親しい間柄になっていました。
長い話になるような予感がして、ニドルスは先に小用を済ませてから、ディオーナの通信端末に連絡を入れます。
「ニドルスです。メールを見ました」
「ああ、ようやく……。ごめんなさい。こちらは、ヴェローネなんだけど……ニドルス君。今からすぐに動ける?」
何やら憔悴したような涙声でした。それを不思議に思いながらも、ニドルスは間髪を入れずに答えます。
「はい。動けますけど……何があったんですか?」
しかし、そこでニドルスがヴェローネから聞かされたのは、あまりにも唐突すぎて、およそ信じがたい話でした。
(嘘だよね。そんなの、絶対、何かの間違いだよね。)
ヴェローネの指示どおりにタクシーで病院へ駆けつける間、ニドルスはずっとそう祈り続けていました。
しかし、ニドルスが病院のフロントで担当者に名前を告げると、静かに案内された場所は病室では無く、霊安室でした。ヴェローネは寝台脇の椅子に腰を下ろしたまま、寝台の上に突っ伏すようにして泣いています。
「お連れしました」
担当者は妙に丁重な口調でヴェローネに一声かけると、そのまま退室しました。
ヴェローネはゆっくりと体を起こし、振り向きました。一体どれほど泣けばそうなるのか、彼女の両目の周囲はもう真っ赤に腫れ上がっています。
「ああ。ニドルス君、よく来てくれたわね」
その様子を見て、ニドルスもついに『これは決して「何かの間違い」などではないのだ』と観念しました。
「ごめんなさい。当家では、昔から『葬儀は身内だけでの家族葬』と決まっているから、故人の友人は呼んであげられないの。だから……明日には葬儀をして、その日のうちに二人とも墓に埋めてしまうから……あなたには今日のうちに、ディオーナにお別れを言ってあげてほしくて……それで、あなたを呼んだの。いきなりこんな場所に呼び出したりして、ごめんなさいね」
二台の寝台には一体ずつ遺体が横たわっており、全身に布がかぶせられて顔だけが見える状態になっていました。その顔立ちは、確かにディオーナとその父親のものです。
「どうして……こんなことに……」
ニドルスは、たったそれだけの言葉を、やっとのことで絞り出しました。
「ごめんなさい。私がついていてあげれば……あるいは、こんなことには、なっていなかったかも知れないのに……」
ヴェローネは、必要以上に『ごめんなさい』を繰り返しました。
もちろん、それは「謝罪の言葉」ではありません。彼女自身は何ひとつ悪いことなどしていないのですから。
誰にも謝るべき理由など無いはずなのに、それでも、ヴェローネは悲しみのあまり、理由の無い「自責の念」に駆られて、そう言わずにはいら
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