第四十一話 好意その十五
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「わらわはです」
「よかったと思うのですね」
「そうです、これまでです」
「あの神主は活き」
「彼は心を保ち」
「妹を殺さず」
邪な顔をさらに歪めさせて言った。
「地の龍になり」
「今もです」
「己の心のままいます」
「しかもです」
「そなたの傍にいる少年も生きている」
「全てがです」
まさにというのだ。
「貴女の望む方にはです」
「進まない様になっていると」
「わらわも運命は絶対と思っていました」
丁は自分のその諦感を述べた。
「しかしです」
「それは過去のこと」
「そうなりました」
そうだというのだ。
「そしてです」
「この度の戦いもですか」
「彼は地の龍にはなりません」
そうなるというのだ。
「わらわはなるとです」
「夢で見た筈」
「そうでした。しかし」
それがというのだ。
「それが変わるとです」
「期待していますか」
「必ず」
「またわらわが動けばいいだけのこと」
ここでも邪な顔になって言った。
「そうして」
「そうはさせません」
真剣な顔でそれを止めた。
「わらわが」
「そなたはわらわ」
丁は言った。
「そうだというのに」
「そうであるからこそです」
「わらわの邪魔をすると」
「そうです」
まさにというのだ。
「この世界を。人間を護る為に」
「戯言を。わらわはそなた」
丁の口で言うのだった。
「そなたの本音こそわらわそのもの」
「違います」
目を閉じて己の言葉を否定した、表情がめまぐるしく変わる様子はまるで二人の人間が一つの身体で話す様だった。
「わらわの心はです」
「あくまでこの世界、人間を救いたい」
「そうです。貴女はわらわではありますが」
それでもというのだ。
「わらわとは裏返しの」
「もう一人のそなただと」
「そうです。わらわが夢見として生きてきて」
そうしてというのだ。
「抑えられていたものが裏返った」
「もう一人のそなただというのじゃな」
「そうです」
まさにというのだった。
「まさに」
「そう言うか」
「あくまで」
「否定し拒むならよい」
丁のその言葉を嘲笑する様に言った。
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