第零章 メイファー・シュタット事件
プロローグ
三人目の赤ん坊
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と共に老生体が現れたのは。
「くっ」
素早く三人を守る姿勢を取る。大きい音に驚いたのだろう、三人とも先ほどよりも鳴く声が大きくなった。
そして文頭に戻る。
「クケ、ケケケケ」
笑ったのだ、その老生体は。女性を見ながら、まるで狩りをして獲物を取った狩人のように笑ったのだ。
その声に、デルクは憤怒の表情を変えぬまま空いていた右手を裏拳の形をとって衝剄を放った。壁ごと窓ガラスが破砕され、その出来た穴からデルクは飛び出した。
いくらデルクが腕の立つ武芸者でも赤ん坊を抱えながら戦闘など出来るはずがない。赤ん坊に支障のない程度に走るが、人間と汚染獣、身体の身体能力は汚染獣に分がある。いずれは追いつかれるが、デルクは一人ではない。デルクが追おうとしていた老生体に何十発にも及ぶ衝剄の嵐が殺到する。
外でデルクの帰還を待っていた武芸者たちが老生体を見逃すはずもなかった。デルクはそのまま走り続け、待機していた未成年武芸者に赤ん坊を預けた。
「なっ!? 幼生体だと」
デルクを含む、武芸者が混乱していた。それほどまで幼生体の出現はイレギュラーだった。しかし、この程度でうろたえるほどグレンダンの武芸者のレベルは低くはない。
素早く体制を立て直し、衝剄を放ちながら突貫する。汚染獣の中でもっとも弱い幼生体に遅れを取る武芸者はこの中にはいなかった。
デルクも部下を率いて幼生体に突貫するが、デルクの目標は幼生体ではなく老生体だった。それ以外には目を向けずに、ただ老生体への道を切り開くために手の中の鋼鉄錬金鋼を振るった。
ベッドにいたあの女性を思い出す。安堵した顔だった。子供を守るという親として立派な行為を果たして死んだ。最後まで子供のことを思っていたのだろう、腹には深い傷を負っていたがそれでもあそこまで逃げる執念と濡れた布を子供に包んだその愛情。だが、それを笑ったのだ、あの汚染獣は。それは、もしかしたら鱗と鱗が触れ合って生まれた幻聴だったのかもしれない。
それでも、そうだとしても……
「……」
ガキィ! と甲高い音がして錬金鋼と老生体が持つ歪な剣が打ち合った。
老生体の顔を見ると目があった。いや、目というには歪。瞼も表皮もない、生物とは思えない目だったが、その目は驚いているように見えた。
そんな時、背中から伸びている四対のかぎ爪が一斉にデルクに襲い掛かった。それを交わし、デルクは隙を見て一本のかぎ爪を切り落とす。
そしてそのペースを保ちながら、かぎ爪を落としながら戦っていた。普通ならばデルク一人では老生体を倒すことはできないだろう。
しかし、人型という形を取っていたのが良かった。人の形をしているなら基本は人間と同じであり、武芸は基本的には汚染獣に向けて使うものだが一番戦う訓練相手は人である。そのため、多少の力量差は
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