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第四十一話 好意その一

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                第四十一話  好意
 星史郎はその時夜の満開の桜の下で豪奢な着物を着た少女と見まごうばかりの容姿の黒髪の女性を抱いていた、見ればその顔は微笑んでいるが死相が浮かんでいる。
「星ちゃん、貴方はこれでね」
「桜塚護ですか」
「次のね。桜塚護は代々だけれど」
 桜塚家の者が継ぐというのだ。
「実はいつもよ」
「一人ですね」
「依頼者はいても」
 それでもというのだ。
「その素性は敢えてね」
「詳しく知らないのですね」
「そして出来る限りよ」
「依頼者も協力者で」
「そう、桜塚護の一人になるからよ」
 だからだというのだ。
「それでね」
「殺さなくてはならないですね」
「桜塚護は表向きは集団だから」
「桜塚護を継ぐのなら」
「その全員をよ」
 桜塚護の構成員全てをというのだ。
「そうしないといけないの。けれど」
「出来るだけ、ですか」
「次の桜塚護、自分の子供の手を汚さない為に」
「常に一人ですか」
「殺すのは一人でいいの。そして」
 そのうえでというのだ。
「桜塚護が最も愛する人がよ」
「桜塚護を殺して」
「次の桜塚護になるのよ」
 そうなるというのだ。
「そしてね」
「今は僕がですね」
「私を殺したから」
「母さんを」
「ええ、私はあの人を殺してなったわ」
「父さんをでしたね」
「そして今度はね」
 優しい微笑みを死相に浮かべさせて話した。
「私がね」
「僕に殺されましたね」
「そうよ、だからね」
「僕が今からですね」
「桜塚護よ。そして」
 母はさらに話した。
「次になるのはね」
「僕が一番好きな人ですか」
「若し星ちゃんが結婚して子供が出来たら」
「僕の奥さんか子供に」
「ええ、殺されるわ」
 そうなるというのだ。
「そうなるわ、そしてね」
「僕に好きな人なんていませんよ、そして」
「これからもなのね」
「出来ませんよ」
 星史郎は微笑んで否定した。
「僕は誰かを好きになったことはないですから」
「本当?」
 母は息子に問うた。
「そのことは」
「はい」
「私も?」
「そうですよ」
「嘘ね」 
 母は息子のその言葉を目まで見て微笑んで返した。
「それは」
「嘘ですか」
「星ちゃんは嘘吐きだから」
 優しい、母の微笑みで言うのだった。
「そう言うのよ。今は私に対してだけじゃなくて貴方自身にも嘘を吐いているわ」
「そうですか?」
「気付いていないけれど」
 自分ではというのだ。
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