【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第1章】無印とA'sの補完、および、後日譚。
【第4節】闇の書事件にまつわる裏話。(前編)
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「私もそう思っていたんだが……実は昨日、久々に上層部から大きな仕事を命じられてね。今月のうちには艦隊を組んで南方へ、〈辺境領域〉の南部へと遠征することになった」
「艦隊を組んで、ですか?」
リンディの声も、さすがに緊張したものとなっていました。
そもそも「提督」とは、艦隊指揮の権限を持った人物のことですが、実際には、カラバス連合との三年戦争が終結して以来、管理局の次元航行部隊が「戦闘用の艦隊」を組むのは「有事のみ」となっていたのです。
ニドルスも真顔で小さくうなずき、また言葉を続けました。
「今さら『弔い合戦』という訳でも無いんだろうが……まあ、内容的には30年前に兄貴たちがやった仕事の『延長戦』と言って良いのかも知れないな」
「具体的には……どちらの世界で何をする予定なんですか?」
「あまり表沙汰にはできない話だが……邪悪な宗教結社〈邪竜の巫女〉の掃討作戦だよ。特定の世界に焦点を絞ることができないから、おそらくは何年も地道に続けて行くことになるだろうと思う。
今時こんな遠征は誰もやりたがらないが……今にして思えば、62年に突然、提督に昇進させられたのも、これを見越してのコトだったらしい。とんだ貧乏くじだが、『あの女』から直接に頼まれてしまったのでは、私としても断りようが無いよ」
他ならぬ「クレストの最後の仕事」の続きなのですから、実際には、「あの女」の頼みではなかったとしても、ニドルスが断っていたはずなど無いのですが、ニドルスは少しおどけたような口調で、わざとそんな言い訳(?)をしました。
どうやら、ニドルスは、周囲から「立派な人物」と思われることが随分と苦手なようです。
一拍おいて、今度はニドルスの方が不意に話題を変えました。
「ところで、あれからもう10年あまりになる。そろそろ、またアレがどこかに現れる頃合いなんだろう?」
「ええ。もうとっくに、どこかに現れていても異常しくはないはずなんですが」
アレというのは、もちろん、リンディにとっては「夫の仇」とも言うべき〈闇の書〉のことです。
「今までのアレの移動経路から考えて、今回はファルメロウの東側あたりが危ないのではないかと予想し、私たちは年が明けてからずっと、ただ一隻であの一帯を巡回していました。辺境領域なので、なかなか付き合ってくれる艦も見つからなかったのです。
今回の一件は、ファルメロウの北側に位置する接触禁止世界で起きた偶発的な事件で、私たちは『ただ単に近くにいたから駆り出されただけ』という状況だったんですが、この一件が落ち着いたら、私たちはまたあの一帯の巡回任務に戻るつもりでいます」
リンディも、〈闇の書〉がすでに十年前から他で
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