【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第1章】無印とA'sの補完、および、後日譚。
【第2節】ユーノ・スクライアの物語。(後編)
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さて、ここで物語は遡って……今を去る9年半ほど前、新暦55年の末のことです。
ハドロの率いる支族は、同55年の10月のうちに、クレモナにも近い〈無81ナバルジェス〉の低緯度帯で「クラナガンとは2時間ほどの時差がある土地」に、新たに発見された遺跡を発掘調査するためのキャンプ地を築いていました。
しかし、同年の12月になると、そのキャンプ地のすぐ近くに、一機の見知らぬ小型艇が「自動航行プログラム」に従って着陸し、搭乗口の扉のロックを開放すると、今度は「自殺プログラム」に従って全機能を停止します。
それは、あからさまに不審な状況でした。
その支族で技師と医師を務めている「マルギス夫妻」が、二人で慎重にその艇内に乗り込んで見ると、操縦室は最大で五人乗りの「よくある設計」でしたが、実際に乗っていたのは後部座席に女性がただ一人でした。しかも、今は薬で眠らされています。
操縦者が乗り込まない「完全自動操縦」は、明らかに違法行為でしたが、この状況では、それは大した問題ではありません。
女性はノーメイクでしたが、それでも、なかなかの美人でした。しかし、年齢はもう四十前後といったところでしょうか。手の指の荒れ方などから見て、つい先日まで日常的にみずから家事労働をしていた女性なのだろうと容易に見当がつきます。
(つまり、彼女は決して「上流階級の出身」ではありません。)
また、彼女の私物と思しきモノは、旅行用のトランクひとつしか見当たりませんでした。そのトランクは当然に施錠されていましたが、外部から通常のスキャンをした限りでは、危険物は何も入っていないようです。
その女性を小型艇から降ろして、キャンプ地で通常の医療検査をしてみると、彼女は遺伝的には「クレモナ人のハーフ」でしたが、今は妊娠していることが解りました。
もしも四十歳で初産ならば、このキャンプ地ではちょっと厳しかったかも知れませんが、幸いにも、どうやら経産婦のようです。
彼女自身も胎児の方も、健康状態には特に問題が無いようなので、今のところ、出産に関してもさほど心配をする必要は無いでしょう。出産予定日もまだ5か月は先のことで、スクライア一族としては一安心といったところです。
小型艇の方も「自殺プログラム」によって、すでに航行記録などのデータは全て消去されていましたが、一族があらかじめ軌道上に設置しておいたサーチャーの記録から、この小型艇は、やはり「最寄りの管理世界」である〈管46クレモナ〉の方から来たものだと判明しました。
あの世界からであれば、このレベルの小型艇でもざっと12時間で来られるはずです。
それでも、薬の投与量を間違えたのでしょうか。彼女は、それか
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