【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第1章】無印とA'sの補完、および、後日譚。
【第2節】ユーノ・スクライアの物語。(後編)
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ら見れば、私や君だって充分に怪しいよ」
「まあ……確かに、それは否定できませんが……」
「五年前に君が来た時の状況も、大変なモノだったが、私の場合は、さらにヒドかった。君には、話したことがあっただろう?」
「ええ。確か……三十年前の〈闇の書事件〉で、あなたが乗っていた貨客船は大破し、脱出艇でも火災が発生して、たまたま近くにいたスクライア一族の船に救助された時には、すでにみな酸欠で倒れており、そこから息を吹き返したのはあなた一人だけだった。その火傷の跡もその時のものだ……というお話でしたね」
〈闇の書〉はほぼ十年ごとに「出現しては暴走」を繰り返しており、管理局にとって二度目の直接遭遇となる「新暦25年の事件」では、民間の次元航行船にも相応の犠牲が出ていたのです。
「しかも、酸欠のせいで、私はしばらく『記憶障害』にかかっていた。当時の状況を考えれば、『脳に深刻な後遺症が残らなかっただけでも幸運だった』と言うべきなのだろうが……普通に考えれば、この経歴は『怪しいにも程がある』と言うものだよ」
ハドロはそう言って、やや自虐的な微笑を浮かべました。
「まあ、それは確かにそうかも知れませんが……。それと、まさかとは思いますが、彼女は、昨年の〈闇の書事件〉とは関係ありませんよね?」
ガウルゥが言っているのは、新暦54年の11月に、将来有望な若手艦長クライド・ハラオウンが殉職した事件のことです。
「あの事件が起きた場所は、ここよりもずっと東方だ。クレモナは無関係だよ。それに、あれからもう丸一年以上も経っているんだ。彼女の妊娠もまだ五か月目。少なくとも『直接の』関連は何も無いだろう」
実は、この時点ですでに、ガウルゥの中には、ひとつの疑念がありました。ハドロは最初から、彼女のことを個人的に知っていたのではないか、という疑念です。
実は、ガウルゥは昨夜うっかりと声を掛け忘れ、結果として「二人きりの情景」をチラリと覗き見てしまったのですが、ハドロはそこで、眠り続けるアディの髪を優しく撫でさすっていました。ハドロの性格から考えて、彼が「見ず知らずの女性」にいきなりそんなことをするとは、とても思えません。
しかし、その件に関して自分からは何も語らずにいるハドロの「心の裡」を想うと、今ここで軽々しく訊くことなど、ガウルゥにはできませんでした。
結局のところ、「従者」の立場にあるガウルゥが、主人からそれを訊き出すまでには、これからなお十年ちかくもの歳月を要したのです。
翌56年の5月、ミーナ・マルギス・スクライア医師が産婆を務め、アディ・モナス・スクライアは、一族のキャンプ地で無事に男の子を出産しました。
そして、アディはみずから、その子に「ユーノ」と名
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