【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第1章】無印とA'sの補完、および、後日譚。
【第2節】ユーノ・スクライアの物語。(後編)
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はいるが、基本的には「持ちつ持たれつ」の関係であって、必ずしも従属している訳では無い、ということ。
なお、スクライア一族も昔は「鉄の掟」に縛られた血族集団だったが、120年あまり前に管理局と手を組んでからは、その掟も形骸化し、旧暦のうちに単なる職能集団へと速やかに変貌した、ということ。
以来、『来る者は拒まず、去る者は追わず』を大原則として来たので、今や「マルギス夫妻」のような「純血の」スクライアはむしろ少数派で、外来者やその二世の方が多いぐらいだ、ということ。
そして、実のところ、かく言う自分やガウルゥもまた外来者なのだ、ということ。
それを聞くと、アディはふと小首を傾げて問いました。
「それでは、去る人もいたのですか?」
「うむ。最近はあまり聞かないが、新暦の初期、いわゆる〈大航海時代〉には、『技能だけを習得して去って行った若者たち』も多少はいたそうだよ。
実例としては……ウチとは別の支族で、今はアグンゼイドという男が支族長を務めている支族の話になるが……元戦災孤児の「アヴェニール四兄妹」の離反などが有名なところかな。
スクライア一族には、遺跡発掘などに関してさまざまなノウハウの蓄積があり、我々はそれを『積極的に普及させよう』というつもりも無いが、必ずしも『独占しておきたい』と思っている訳でも無い。一人になっても生きて行ける者が去って行く分には、我々は別に構わないんだよ」
そして、しばしの沈黙の後、ハドロは不意に、こう言葉を続けます。
「ところで、宗教は聖王教で良かったかね?」
ただそれだけを確認して、ハドロは「アディ・モナス」をスクライア一族の一員として認め、一族の名簿に登録しました。
(スクライア一族には、一族の名簿を五年ごとに管理局に提出する義務があり、次の提出日が来年の春に迫っていたのです。)
その後、ハドロはまたガウルゥを呼んで食器を下げさせた後、次には「マルギス夫妻」を呼び、アディ(自称、40歳)が「一族の暮らしぶり」に早く馴染めるように、彼女の身の回りの世話と生活の指導を頼みました。
支族の中では技師を務める夫のザール(32歳)と、同様に医師を務める妻のミーナ(31歳)は、長老からの依頼を快諾し、早速、アディを連れてそのテントを後にします。
そうして、またしばらくすると、今度はガウルゥ(26歳)が再びやって来て、いかにも心配そうな顔つきでハドロに尋ねました。
「本当に、これで良かったんですか?」
「何がかね?」
「彼女、明らかに怪しいですよね?」
従者としてはごく当たり前の「用心深い態度」でしたが、それでも、ハドロは穏やかに笑って、こう返します。
「素性が怪しいなどと言い出したら、知らぬ者か
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